• 定年男子のランとマネー

僕は子供のころから小説を読むのが好きで、投資の世界も小説から入りました。

最初に読んだのは、(たぶん)獅子文六著「大番」だと思います。

この小説をご存じの方は、かなりの年配になると思うのですが、愛媛県宇和島出身のギューちゃんが昭和前期に日本橋兜町で「相場師」として成長し、大勝負を張っていく物語です。

株式投資を完全な「投機」として扱っています。

次に記憶に残っているのは、清水一行著「大物」です。

この本は立花証券元社長である石井久氏をモデルにして書いたものです。

経済の理論をもとにして、世界の潮流を読み、相場の騰落を的中させていくというお話ですが、「大番」に比べてインサイダー的な様子は薄いものの、自分の読みに基づいて相場を張っていくという「投機」的な側面は残っています。

この小説は1983年の発行なので、そのころに学生時代や社会人初期を経験した方にとっては「株式投資=投機」のイメージが脳内に強くプリントされているでしょうね。

これらの小説で描かれた株式投資の世界は、「相場」という名前の投機で、「攻め」の投資になります。

それでは「守り」の投資はあるのでしょうか?

NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」理事長の岡本和久さんは、「投資は世界株式インデックスファンドに積み立て投資をするだけでよい」と言われています。

(実際はもう少し含蓄があって、もっと奥が深いのですが、ここでは話を簡単にします)

「世界株式インデックスファンド」というのは、世界中の上場している株式会社の株に投資するファンドです。尤も、すべての上場会社を網羅しているわけではありません。

世界の数千の上場株式会社の株式にウェイトを付けて、コンピュータの助けを借りて投資します。世界経済の現状からいって、自然に米国の上場株式の比重が大きくなります。

これはインデックス投資と言われるもので、分類すればパッシブ(受け身)運用です。

「守り」の投資と言えなくもないのですが、僕は少し違うのではないかなと思っています。

「攻め」が損失を恐れず「儲け」に行く投資とすれば、「守り」の投資は損失を出さない投資であるはずです。

しかし、現在の新型コロナ禍による相場変動を見てもわかるように、世界株式インデックスファンドに投資しても、現在は含み損を抱えている人が多いでしょう。

つまり、実現するかどうかは別にして「損」はしているのです。

僕なりに「世界株式インデックスファンド」を定義すれば、これは「付いていく」投資ではないかと思います。

長期的な世界経済の(つまり人類の)成長を信じて、その成長にペースを合わせて投資していくということです。

信念をもって、前に進むという意味では、「投機」とは全く異なるものの、やはり「攻め」の投資だと思います。

では「損失」を出さない「守り」の投資とは、なんでしょう?

例えば「交通事故を起こしたくなければ、自動車に乗らなければよい」ということを言う人がいますが、「損をしたくなければ投資をしなければよい」ということでしょうか?

確かに、それも一面の真理ですが、投資をする意味が、単に儲けるだけではなく、世の中の進歩に遅れないようについていく・・つまり投資をすることで、インフレが起こった場合の「損失」を回避すると考えればどうでしょう?

この考え方は、別の言い方では「購買力を維持する」ということになります。

現在と同じ価値のものを手に入れようとしても、未来のある時点では価格が変化している可能性があります。

その価格変化についていくために、変化に合わせるくらいの投資をしようということですね。

これが「守り」の投資ではないかと思います。

では「守り」に適した投資はどのようなものがあるのでしょうか?

いろいろな専門家がいろいろな意見を述べるかもしれませんが、僕は株式ではなく「債券」投資が該当すると思います。

債券は基本的に発行時の債券を満期まで持ち続ければ、その間に当初約束した金利をもらったうえに当初の元本が償還されます。

金利水準に納得がいけば、当初予想通りの儲けが得られて、その分がインフレ程度であれば、「守り」の投資の目的が達せられます。

ただし、債券の世界は、株式と同じくらいかそれ以上に奥が深く、リスクの取りようによっては、「信用リスク」「元本変動リスク」をはじめ様々なリスクが存在します。リスクの取り方を間違えれば、損をすることもあります。

元来「投資」とは(自分が許容できる範囲の)リスクをとるものなので、当たり前と言えば当たり前なのですが、株式投資と同じくらい勉強しないと思わぬ落とし穴にはなることがあります。

最後に、「楽しむ」投資について少し考えてみたいと思います。

例えば、国債などの債券投資で「守り」を固め、「世界株式インデックス」で「攻め」の体制を作ったけれど、それだけではなんとなく面白くない、投資の楽しみが欲しい・・という方には「個別株投資」を試してみてはいかがでしょうか?

「個別株投資」は、ものすごく簡単に言えば「あの人(会社)はどんな人(会社)だろう?」という興味を持てる対象を調べることです。

その人(会社)の過去の経歴から現在のスキルや資産と収入、将来の可能性などを調べて予測することですね。

確信が持てたら、その人(会社)と接点を持ってお付き合いを始めます。

人間関係と会社への投資の違いは、人間関係は利害とともに相互の感情が絡みますが、会社への投資は利害だけです。(たまに自分の感情が邪魔をして、相手にさよならを言えない時がありますが 笑)

少しだけ、銀行に勤務していたころの僕の経験を言えば、ある会社に関して財務諸表や現金残高、売り上げや仕入れなどの数字をすべて把握して、経営者にも頻繁に会っているのに、その会社がどうなっていくのかを確信をもって言えたことはあまりなかったように思います。

経営者は大事なことは他人には言わないものなのですね。

つまり、個別株投資は、きわめて限られた情報をもとに完ぺきではない分析ツールで判断して自分のお金をその会社に投じるものですので、できれば「楽しみ」の範囲の金額でされることをお勧めします。

自身の経験からくる判断に絶対の自信があって、思い切って投資するのは格好いいと思うかもしれませんが、これで失敗する人は多いです。

例えば、長年の会社勤めを終えて自由になり、多額の退職金をもらって気が大きくなりすぎた人などでしょうか(笑)

「攻め」と「守り」と「楽しみ」の自分なりのバランスを考えて、投資の果実をお楽しみ下さい。


コメント一覧

返信2020年5月11日 8:58 AM

岡本和久24/

内山さん コメントありがとうございます。株式投資に「守り」はありません。「負けない可能性の高い攻め」と「負ける確率が高い攻め」があるだけです。私は全世界の株式インデックス・ファンドは前者だと思っています。 「大番」は大好きな小説です。加藤大介主演の映画をTSUTAYAで探しているのですが見つかりませんね。

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