• 定年男子のランとマネー

「保険などの金融商品を販売しない、独立した金融アドバイザー」という考え方は、昨今急速に広まってきているように感じます。

私がFIWA(みんなのお金のアドバイザー協会)に入会した数年前は、フィナンシャルプランナー(FP)といえば、金融商品を販売するセールスマンと同じと考えている人が多かったように思います。

現在でも、FP資格を持って、保険会社と契約して顧客に保険を販売し、保険会社からのキックバック手数料収入を受け取っている方や、証券会社と契約して株式などの証券を販売するIFAと呼ばれる方々も沢山おられます。

金融商品を販売する方々は、その道のプロとして頑張っていただきたいですね。

しかしながら、10年近く前に、私が独立するときに考えたことは、顧客に金融商品を販売することはやりたくないということでした。

理由は、私の過去の経験からきています。

バブル盛んなころに、私は大手銀行で、スワップやオプションを基にした

金融商品の企画開発に関わっていたことがあります。

当時の最新金融技術を活用していたわけですが、販売側の商品の利鞘はかなり大きな数字でした。

そしてこれを販売する相手は、同じく金融機関でした。

金融商品を開発する側も、購入する側も、金融業界のプロなので、売る方は

商品の仕組みを相手にわからない様に販売しようとし、買う方は、商品の仕組みを読み解いてと利鞘を計算して購入を検討します。

いわば、プロとプロとの「化かし合い」なので、ゲームをやっている感覚で

販売合戦をやっていました。

ところが、ある時に、銀行の偉い人が、「この金融技術を活用して一般顧客向けの商品を開発して販売しよう」と言い出して、積極的に販売を始めました。

マーケットが好調な時は良かったのですが、しばらくしてバブル崩壊とともに

金融技術を活用した商品の中には、レバレッジが大きいゆえに、損失の金額が

拡大して、顧客に多大な損失を与えるものも出てきました。

私は、バブル崩壊と同時期に米国に転勤になったので、国内の詳しい惨状を見たわけではないのですが、数年後に帰国して支店勤務になって、バブル崩壊後の

銀行と顧客の信頼関係の喪失を、現場で目の当たりに見ることになりました。

銀行は顧客の信頼という大きな財産を失いましたが、その時に考えたことは、

金融のことをよく知らない一般顧客を守るための人が必要ではないかということでした。

昨今の「顧客本位の金融アドバイザー」推進の動きは、まさに当時の私が願っていたことなので、微力ながら協力しようと思って、金融アドバイザーを業としています。

ただ、最近に気になるながれとして、FPが資産運用アドバイスを目指して、勉強し努力するのは好ましいのですが、単にお金持ちをターゲットにして手数料収入を上げようとだけ考えるのでは、保険などを販売して保険会社から手数料をもらっていることと、マインド的には同じように思えます。

FPの仕事は、本来は生活者のライフプランを基にして、よりよい人生を実現するための手助けとして家計管理をアドバイスすることではないかと思います。

仮に「食っていくためには、富裕層に食い込んでいかなくてはいけない」

ということであれば、それは「食っていくためには、保険を売ってキックバック手数料をもらわねばならない」ということとあまり変わらないでしょう。

その場合には、金融商品の販売者としての立場を明確に顧客に説明して、

金融ビジネスを行ったほうが良いと思います。

過去数年にわたり、金融庁が指導して、販売者へのキックバック手数料の高い

外貨保険や節税保険の販売を規制していったことと同様に、今の傾向が続くならば、そのうち何らかの形でお金持ち向けビジネスも規制の対象になる可能性もありますね。

一人のFPとして、投資助言業や資産運用業とは異なる、生活者への家計管理

アドバイスについて、今年はじっくり考えてみたいと思います。


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