11月23日、24日の二日間、鹿児島県と宮崎県に広がる霧島連山のうち、霊峰高千穂峰と(山頂から韓国が見える?)韓国岳の二座に、友人たちと登ってきました。
霧島連山を航空写真で見ると、地中でショットガンを構えた神様が、マグマの弾丸を充填して思い切り打ち放った跡が、大きな口を開けた、いくつもの火口として残ったような空想が湧いてきます。
遠くには、いまだ噴煙をあげている桜島を望むことができ、九州南部のこの地域の地面下は、活発に活きていることが実感できますね。
今回の旅は、東京からの参加者2名、大阪から2名が、23日朝、鹿児島空港に集結して
始まりました。
私を除く3名は、同じ大学からの友人たちで、これまでにも年に数回集まって、六甲山全山縦走などに参加してきました。
私は、彼らとは別の大学で、しかも就職後4年で海外に転勤、その後約15年を経て関西に戻ったので、学生時代からの友人や知人とのご縁は、ほぼそこで切れています。
長く続く友人である彼らの会話を聞いていると、学生時代の思い出、就職した会社のこと、趣味や家族のことなど、脈絡もなく、時空を越えて話が飛んでいるのですが、ご当人たちは一連の流れでこれまで一緒に過ごしてきたので、同じ物語の中で全く違和感なく話が進んでいるようです。
思い出を共有するコミュニティとは、こういうものなのだなと思いますね。
大阪からの参加者2名は、午前7時伊丹空港発の飛行機に搭乗し、鹿児島空港に8時過ぎに到着。
前泊していた、東京からの参加者1名と合流して、予約していたレンタカーを借りて
10時ごろに到着予定の、もう一人の東京からの参加者を待ちました。
先乗りしていた東京組の1名は、これまでご両親の介護で大変な苦労をしていたのですが、
父親が亡くなり、母親の認知症が進んで施設に入所して、ようやく一息がつけて、少し
自分の自由になる時間ができたそうです。
そこで、時間を見つけて、夫婦で、長年の夢だったキャンピングカーで温泉巡りに出かけることや、
今回のように、余裕をもって前泊と後泊を組み合わせて、一人温泉旅を楽しむことができるように
なったと言っていました。
もう一人の東京組が到着して、早速に高千穂峰登山の登山口である、高千穂河原に向かいました。
途中の道路沿いには、ところどころで温泉の湯気が上がっていて、火山地帯に来ていることを
実感しましたね。
「天孫降臨」といっても知らない人がいると思いますが、古事記・日本書紀に記された神話の中で、天照大御神の子孫が地上に降り立った場所が、霊峰高千穂峰と言われていて、
山頂には、「天の逆鉾」が突き刺されています。
そう聞いて麓から山を見上げると、何となく神々しい感じがします。
幕末の志士坂本竜馬が、妻と日本初の新婚旅行に来た場所でもあります。
150年以上前の新婚旅行で、この山をよく登ったなと思いますが、竜馬は山頂で、この逆鉾を引き抜いて見せたというエピソードが残っています。
罰当たりな人ですね 苦笑
さて、高千穂河原から、まず御鉢に登ります。
御鉢は、文字通りお鉢の形をした火口跡で、ここを越えて、さらに高千穂峰に登るのですが、
問題は、ざらざらの砂道で、足の踏ん張りが効きにくく、うっかりするとズルっと滑ってしまう道です。
「富士山の砂走みたいやなあ」というのが、富士山登山経験者の言葉。
ところどころ、岩や石が顔を出しているので、そこを足掛かりに登っていきましたが、高低差に比べて、踏ん張りが効かない分だけ脚が疲れますね。
頂近くでは、岩につかまりながら、足を踏ん張って登るのですが、この岩の表面がギザギザになっていて、茨を触っているような感じでした。
御鉢を過ぎると、少し下ってから、高千穂峰への登山道です。
距離はそんなにないのですが、周囲に木などの障害物がなく、比較的急なガレ場の山道で、遠くに登っている登山者が見えていました。
(竜馬は、よくこんな山を。奥さん連れで登ったなあ。登るのに苦労したから、腹いせに逆鉾を抜いたのかな?)
私の想像です。笑
高千穂峰山頂からの景色は絶景でした。
当日は、山頂は少し冷たい風が吹いていましたが、快晴。
遠くに、噴煙を上げている桜島、その向こうに、かすかに開聞岳が見えて、最高の景色でした。
下りは砂とガレ石でズルズル滑る道を降りて行ったのですが、御鉢から降りるときに、手袋をし忘れていて、うっかり岩につかまって、手のひらを怪我しました。
結構血が出て、持参の救急用品からバンドエイドを出して貼って、手袋をはめて下りましたが、途中で様子を見ると、出血が多くてバンドエイドが剥がれそうでした。
ビジターセンターまで到着して、消毒と新しいバンドエイドを貼ってもらいました。
登山では、肌の露出はリスクがありますね。
基本を忘れていました。
高千穂峰から下山して、レンタカーで宿泊先の旅行人山荘に向かいました。
この温泉は、江戸時代に発見され、大正6年に創業した温泉旅館です。
2つの源泉をもっていて、5000坪の敷地内には、大浴場、桜島が見える露天風呂、
森の散歩道を経由する野湯が2つ(貸切風呂)があります。
旅館内には、美術品の展示、漫画を含む図書室が2か所など、ゆったりと旅を楽しみたい
旅行者向けの宿ですね。
レストランの大きな窓越しに、美しい錦江湾や、雄大な桜島が見えました。
我々は、到着後に、まず大浴場の露天風呂で桜島・開聞岳の風景を堪能し、少し図書室で
四方山話をしながら休憩した後、貸し切りの野湯に行ってみました。
大浴場も良かったのですが、この野湯も人気のお風呂で、風情があって行って良かったですね。
ここで友人が一句
霧島や 湯に浸かり観る オリオン座
風呂から上がると夕食ですが、旅館の広間にはグランドピアノが置いてあって、毎週1回コンサートがあり、たまたま当日はコンサートがあるそうなので、夕食後に演奏を聞いてみました。
ピアニストの方は、霧島出身でクラシックが専門のようでしたが、映画音楽なども交えて
約1時間演奏してくれました。
途中で、誕生日や結婚記念日の人はいますか?という問いかけがあったので、女性が一人と、
我々の仲間が一人手を挙げました。
いずれも結婚記念日だったので、ピアニストはプレゼントとして、ショパンのノクターンを
演奏してくれました。
友人が一句
旅の宿 丹前で聞くノクターン
演奏が終わって、最後にピアニストから、初めて出したCDの紹介がありました。
「演奏してもらったから、買わんといかんやろ」と私。
「そうかな?それはそうやな。嫁の土産に買ってくるわ。幾らかな?」
「一万円かもね 笑」
その時は、CDは渡されたものの、お金の話は出なかったそうです。
翌朝、朝風呂に入って、朝食を済ませ、支払いをするときに、
「CDのお金を払っていないのですが」と聞いてみると、現金で別払いだったそうです。
金額は2500円。
「知らん顔していても良かったけど、俺は正直者やからな」
「一万円でなくてよかったね」と私 笑
再びレンタカーで、えびの高原を目指しました。
ここが韓国岳登山口です。
韓国岳は、山頂から韓国が見えるというのが名前の由来ですが、現実には見えません 笑
登山道には、三合目から八合目まで標識があります。
三合目までは、長いなと感じますが、展望台を過ぎて、五合目は景色もよく、避難小屋もあって一息つけます。
このあたりから、(おそらく)噴火で飛ばされた石が山道を埋めて、浮石になって、滑って歩きにくくなります。
これを頑張って登り、八合目までくると山頂はもうすぐです。
途中で、地元の女性登山仲間と会話する機会がありました。
「地元に居て、この山も登るけど、こんなに風もなく遠くの景色がはっきりと見えるのは
初めてです」と言っていました。
この週末は寒気団が日本列島を襲い、近畿をはじめ九州も北半分は寒かったらしいのですが、鹿児島までは寒気もおりてこなかったようで、絶好の登山日和になりました。
しかし、流石に1700メートルの山で、ところどころ霜が降りていました。
女性たちは、「初霜見た!」と笑っていました。
ここで友人が一句
初霜を 踏みしめ登る 韓国岳
山頂で記念写真を撮って、向こう側の眼下に広がる大浪池の絶景を楽しみました。
この池も火口の跡です。
今回のルートは、韓国岳山頂を越えて、大浪池に降りて、池を一周してから、えびの高原に
戻るルートです。
韓国岳からの下りの登山道のほとんどは木の階段でした。
よく整備されていますが、ところどころ木の板がグラついたり、壊れたりしているので、
多少は注意して降りねばなりません。
トレイルランのように走って降りたら、怪我するかもしれませんね 笑
大浪池近くまで降りてくると、周回路がスタートします。
この道は、石を積んで歩けるようにしてあるのですが、登山道と同じく、極めて歩きにくい
石の道でした。苦笑
他の3人はどんどん先へ進むのですが、私はトレランシューズで来たので足が滑って、
バランスを崩して、転んで怪我してもつまらないので、マイペースで歩きました。
高千穂峰も韓国岳も、山道が滑りやすく、ランニング用の靴では脚に負担がかかって
疲労が溜まっていたようです。
大浪池から韓国岳を望む景色も絶景でした。
行き交う人も少なくて、時々すれ違うハイカーと軽く挨拶しながら、のんびりと周回路を
気持ちよく歩きました。
途中で持参の昼食を食べて、えびの高原駐車場に戻ったら午後1時半ごろ。
そのあと、友人が見つけてくれていた新燃荘で、日帰り温泉に浸かって、山の疲れをいやしました。
この温泉には治療泉があり、浸かったのですが、張り紙で「刺激が強いので15分以上入らない様に」と書いてありました。
友人の一人は、長めに入って「くらくらする」と言っていたので、本当にきついのですね。
ちなみに、露天風呂は混浴で、カップルが一組入浴していました。
(女性は、水着を着ていました 笑)
温泉で温まった後は、後泊する友人を温泉宿まで送り、鹿児島空港近くでレンタカーを返却したのが午後4時半ごろ。
東京へ帰る友人は、午後5時20分の便だったので、お土産を買った後、早めに搭乗口へ
向かい、大阪組は午後6時の便だったので、空港内のレストランで早めの夕食を済ませ、
さくらラウンジでコーヒーを一杯飲んでから伊丹空港に向かいました。
いつものことなのですが、大阪組の一人が、登山計画、ホテル手配、車の運転、温泉発見、
(私の)飛行機の予約など、すべてを完璧に手配してくれるので、残りの3人は
言われたところにやってきて、計画通りに山に登り、言われた温泉に入り、旅行のあとで
立て替えてもらったお金を振り込んで終了になります。
まるで添乗員付きの旅行代理店と無料で契約しているような感じなので、有難いやら、
申し訳ないやら、と思いながら、ご厚意にどっぷりと甘えて、おかげさまで旅行を楽しんでいるわけです 笑
持つべきものは、好い友人ですね 笑