1982年から1987年までの5年間、スペインの首都マドリードに駐在したので、
スペインの年金支給の最低基準を満たしたらしく、66歳の半ばから年金を受け取っています。
1982年当時、海外に駐在するときの給与は、日本で2割支給、赴任地で8割支給の
イメージでした。(現地給与は、国ごとに為替や物価に合わせて決められていました)
日本にいないのに給与をもらう理由は、日本の年金保険料などの社会保険料引き落としや、
財形貯蓄などの引き落としをカバーするためです。
つまり、当時の勤務先の海外駐在員は、日本と赴任地で二重に年金保険料を支払っていたわけです。
当時は若かったこともあって、老後の年金などについては全く考えもしなかったので、
数十年後に必要となるID番号も控えておらず、年金請求の時に大変苦労しました。
話が変わったのは、2010年に発効した、日本・スペイン釈迦保障協定です。
この協定によって、年金保険料の二重払いが解消され、駐在員は赴任中の年金保険料支払い期間が、日本の年金保険料支払い期間として計算されることになりました。
そうなると、2010年以前に年金保険料の二重払いをしていた人は、駐在した期間の長さ次第で、スペインの年金を受け取る権利があるということになります。
社会保障協定は、スペインだけでなく、ネットで調べたら、現在23か国と締結しているので、協定締結以前に、該当国に長期間駐在して社会保険料を払っていた人は、駐在国から年金を受け取る権利がある可能性があります。
年金請求は、公的年金と同じく、年金事務所で行います。
しかしながら、年金事務所に行って聞いてみると、スペインへの年金請求は聞いたことがないとのこと。東京本部に照会しても、例がないとの回答。
おかしいなと思いましたが、とにかく請求手続きをしてもらいました。
数か月して、スペイン社会保険庁からの返事は、「あなたがスペインで社会保険料を払った
記録がない。したがって、年金請求は棄却する」というもの。
そんなはずはない、と思いましたが、ID番号が分からないので、それ以上調査してくれそうもありません。年金事務所も諦め顔。
そこで、かつての勤務先に頼んで、同期間に駐在したことを証明する書類を出してもらうことにしました。
かつての勤務先は、合併して名前は変わっていましたが、人事データは引き継がれていたようで、お願いして書類を出してもらいました。
そのほかに、子供の出生証明書のコピーなどを山ほど付けて、送り返して再調査を依頼したところ、また数か月経ってから、返事がきました。
返事の内容は、記録が見つかり、年金支給の最低年月に達しているので、66.5歳から
支給するというもの。
おかしいな?66歳からではなかったのか?
調べてみると、スペイン国内法の改正があり、年金支給年齢が引き上げられていました。
これは、日本の/年金保険機構も知らなかったようです。
こうして、無事に月額1万円ほどの年金支給が開始されました。
最低支給金額ですから、こんなものです。
ところが、支給開始から1年程度経過したころ、突然支給が止まりました。
おかしいな、と思っていると、スペイン社会保険庁から手紙が来て、毎年一度の「生存確認」ができていないので、年金支給を停止したとのこと。
「生存確認」とは何か?と急いでネットで調べると、スペイン社会保険庁が年金受給者が
実際に生存して年金を受給していることを確認するため、たとえば日本での受給者は、東京にある
在日スペイン大使館で「生存証明書」を発行してもらい、証明書をスペイン本国の社会保険庁に郵送する規則になっていることが分かりました。
なんと、毎月1万円の為に、東京まで年一回往復するのか?
驚きましたが、なおも調べると、大阪に領事館があるので、領事館経由で生存証明書の発行申請が可能と分かり、一安心。
早速、大阪の領事館に行ってみると、そこはサントリー。
スペイン政府の依頼で、名誉領事館として、領事事務の一部を代行していました。
聞いてみると、明治時代に赤玉ポートワインの原料をスペインから輸入して以来のお付き合いだそうで、社員の方が親切に応対してくれました。
スペインワインの話で盛り上がって、楽しかったですね。
ちなみに、スペインの年金受給者は、ほかにもいるそうです。
2023年末になって、スペイン社会保険庁から、また手紙が送られてきました。
今度は何かな?と思って読んでみると、「生存確認」方法にスマホアプリによる確認を
追加したとのこと。
早速ダウンロードして、事前登録を行い、1月1日を待ちました。
(生存証明は、毎年1月1日から3月31日までに行う規則)
時差もあるので、1月2日にアプリを開けて、「生存確認」登録を行いました。
指示内容はすべてスペイン語で書かれているので、果たして上手く完了したのか,いまいち
よくわかりませんでしたが、とにかく終了。これでずいぶん楽になるはずです。
正月明けに、前年お世話になったサントリーさんにメールして、今年は訪問しないことと、
もしも上手くいかなかったらヘルプをお願いしました。
サントリーさんからは、丁寧な文面で、何かあればサポートするという回答が返ってきました。
日本は、マイナカードの国民への浸透に、相当の時間とお金がかかっているようですが、
スペインの例でいえば、デジタルに変えると、すごく便利で時間とお金の節約になりますね。
全ての人が了解し、納得するまで待っていると、物事はなかなか進まないので、デジタル化が本当に必要であれば、思い切って変えてしまうことが大切だと思います。
ところで、スペインという国は、数十年前に駐在していたころにも、思わぬ変化が、
ある日突然起こって、どのように対応するかを模索しながら、仕事をし、生活していた国でした。
おかげさまで、そのあとの人生では、たいていのことには驚かなくなりました。
スペインから年金をもらうようになって、当時の変化がある生活を思い出して、おかしいやら、懐かしいやらで、またスペインに行きたくなりましたね。