私が銀行員時代に、国際関連業務に関わっていたころは、(かなり昔になりますが)円高が普通でした。
むしろ、どうやったら円が弱くなるのだろうかといった感じで、特に1982年から87年まで駐在したスペインでは、(自動車以外の)すべてのものが、驚くくらいに安く感じたのを覚えています。
という訳で、現在の円安を見ていると、別の国にいるのかしら?という感覚ですね。
円安になると、かつての日本のイメージから、輸出が伸びて、貿易収支が黒字化し、自然と円高に向かうという動きを想像します。
しかしながら、内閣府の資料を見ると、日本の輸出依存度は10%台前半になっていて、
アメリカとほとんど変わりません。
輸入ばかりしていて、巨額の貿易赤字を垂れ流しているアメリカと、同じような水準という訳です。
第3-3-10図 日本の輸出依存度 – 内閣府 (cao.go.jp)
輸出依存度が低いということは、経済の体質が内需主導になっているということです。
そして、原油や食料の輸入、海外IT企業へのソフトウェア等の使用料支払いなどを考えると、円安によって貿易赤字は加速し、価格を転嫁できない国内企業の収益は減少し、消費者物価は上がります。
つまり、円安は大きなインフレ要因ですね。
日本政府は、何故円安を放置しているのでしょうか?
考えられるのは、円安によって「安い日本」を作り出し、海外から製造業を誘致することですね。
例えば台湾のTSMCのような会社です。
海外から日本に来る企業が増えれば、投資と雇用が増えて、国が富むという論理かもしれませんが
忘れてならないのは、日本は空前の人出不足という事実です。
海外から来た企業に就職する人は、比較的高い賃金がもらえるかもしれませんが、その他の
国内企業で働く人たちは、低賃金のままで、かつ一人当たりの仕事は増えることになります。
先日若い女性2人に、立て続けに合ったのですが、2人とも海外での仕事を考えていました。
現在、ヨーロッパ等で、ワーキングホリデイ制度を利用して働く若者が増えているようです。
言葉の問題はありますが、日本と同じ単純労働に従事して、日本よりはるかに高い賃金が
貰えるならば、何も日本で働くことにこだわる必要はないと思います。
日本では、低い賃金の上に、税金や社会保険料が割高で、その上、実感としてのインフレ率が高いのですから、たぶん若い人は日本にいる魅力を感じないでしょう。
もしかしたら、戦前の日本で、生活苦からアメリカをはじめ、ブラジルや台湾に移住していった人たちのように、日本の若者が大挙していなくなる可能性もありますね。
一方、私のような年金生活者は、高いインフレ率(生活実感として)と、なかなか増えない年金の狭間で、生活苦に陥ることになります。
若者のように、思い切って海外で仕事もできないし、第一高齢者にできる仕事は無いでしょう。(もしあっても、その国の高齢者が、既に従事しているはずです)
日本株の株高で、投資家にとっては「バラ色の日本」かもしれませんが、このまま円安が続くと、株式投資に縁のない、大多数の日本国民にとっては、「いばらの道」が待っているような気もします。
私の予想が当たらないことを祈りますけど。