出口治明さんの「宗教と哲学全史」を読んでいて、面白いと思ったのは、
キリスト教やギリシャ哲学に代表される西洋の考え方が優位で、
仏教や諸子百家に代表される東洋の考え方が劣っているというのは、
極めて最近のものだという主張です。
古くは、アレクサンダー大王の東方遠征、中世では十字軍は、西洋の人々が
豊かで進んだ東方の文明を求めて、故地を離れて旅立ったと考えられるというのです。
確かに、歴史の長い期間、東方世界は西洋世界に比べて、格段に豊かで文明も進んでいました。
イエス・キリストが生まれたときに、はるばるやってきたのは「東方」の三賢人ですからね。
出口さんの主張に従えば、西洋の考え方が明確に優位に立ったのは、産業革命以降です。
経済力に裏打ちされた軍事力によって、西洋が東洋やイスラム世界を攻撃した結果、
西洋の価値観の押し付けによって、優位性が確定してしまったのです。
特に日本人は、明治以来の西洋崇拝に加えて、第二次世界大戦の敗戦と米国による占領などによって、すっかり西洋優位の価値観が染みついてしまっている気がします。
しかし考えてみれば、人が住み慣れた場所を離れて、遠くに旅立つのは、
自分たちの住む場所がとても住みにくくなったからです。
もしくは、政治的な強権によって、無理やり移住させられるときですね。
現代でも、米国の繁栄が続いているのは、簡単に言ってしまえば、世界から流入してきた
移民のおかげです。
世界の人は、自分の住む場所よりも、よりよい生活と未来を求めて、米国に移住します。
(最近の米国は、国境に壁を作るなどして移民の流入を抑える方向に舵を切っていますが)
しかし、経済的に豊かで住みやすいことと、考え方や価値観が優れていることは、
イコールではありません。
そもそも価値観に違いはあっても、優劣というものはあるのでしょうか?
伝統的な人々の考え方は、生まれた土地の環境や習慣に大きく影響されます。
大陸に生まれた人は、狭い島国に生まれた人よりも、おおらかな考え方を持つ・・
という気がします。(実際はわかりませんけど 笑)
山地や海岸に生まれた人は、平地に住む人よりも、自然を恐れ、神を敬う・・
という気もします。
よく言われるのは、西洋の考え方は自然と戦って征服する・・というもので
これに対して、日本では自然と共生して暮らしていくという考え方の違いです。
少なくとも、地球温暖化などの現状を見ると、西洋流で自然と戦うよりも、
日本流で自然と共生するほうが、現時点で考えれば、生き残る確率は高そうです。