学生の頃の学びは、明確に試験で良い点を取るためでした。
会社員になってから退職までの学びは、仕事をするための知識を得るためでした。
退職してからの学びは、本当に楽しむためです。
楽しむことが主眼なので、学んで得た知識を忘れても、一向に気になりません。
「頭に残らないなあ、まあいいか」
という感じです。
年を取ると根気がなくなるので、興味があることをいくつか選んで、毎日少しずつ
進むようにしています。
一度にやってしまうと、楽しむはずが疲れてしまうことと、
せっかくの楽しみが、すぐに無くなってしまうからです。(笑)
今やっているのは、20世紀スピーチ集というペーパーバックを、
毎日少しずつ筆写することです。
昨年8月から始めて、もうすぐ1年になります。
昨日は、第二次世界大戦直後に、英国のウィンストン・チャーチルが渡米して行った
「鉄のカーテン」という演説を筆写しました。
「バルト海のステティンからアドリア海のトリエステまで、(共産主義という)
鉄のカーテンが、大陸を横断して降ろされた」という演説は、戦後の米ソ冷戦の開始を
告げる有名な演説です。
チャーチルは、ドイツのヒトラーの英国攻撃に耐え抜き、米国やソ連と協力して、ようやく
第二次世界大戦を勝ち抜いたのですが、戦争直後の選挙に敗れて、首相の座を追われ、
戦争を共に勝ち抜いた米国のトルーマン大統領に誘われて米国に行った時に、この演説を
行いました。
チャーチルとともに対ドイツ戦を戦った、ソ連のスターリンが、
西側にとっての新しい敵になったわけです。
この米ソ対立の構図は、1989年のベルリンの壁崩壊と91年のソビエト連邦の解体で、
終わったはずなのですが、現在のロシア・ウクライナ戦争を見ていると、
ロシア(そして中国)の西側との分断が、新しい形で再び起こっているように思えますね。
冷戦の時のような、経済のブロック化が進むのでしょう。
私は、過去のチャーチルの演説を筆写しただけなのですが、現実の戦争を見て考えることで、
歴史から学ぶことは、たくさんあると感じます。
スピーチ集の筆写を始めた、当初の目的は、英語の冠詞と名詞の使い方を確認することと、
英語の文章のリズムを身につけることです。
たまたま仕事で、英文を書く機会が多かったので、正しい文法を使って、格調ある英文を書ければカッコいいだろうなと思って始めた学習です。
動機は不純でしたが、やってみると歴史の勉強にもなって、なかなか面白いですね。
20世紀末までは、残り50年くらいなので、引き続き楽しみたいと思います。
他には、スペインの民主化に関して書かれた論文集を、毎日少しずつ音読しています。
これは10年くらい前にスペインを旅行した時に、マドリードの本屋で見つけた本です。
ずっと積読で置いてあったのですが、時間ができたので、昨年8月から読み出しました。
学者の書いた論文集なので、詳細は分からないことが多いのですが、
構わずに音読しています。
スペインの民主化の時期は、若いころにスペインに駐在した時期と重なるので、
当時のテレビや新聞で聞きなれた固有名詞がたくさん出てくるので、薄らいだ記憶を
たどりながら、論文の趣旨を想像して読んでいます。
これを始めた目的は、スペイン語の音を聞くことで、多少はスペイン語を思いだすことが
できるかな?という程度です。
読んでいると、当時のスペインの労働争議や、フランコ総統の独裁政治の影響(テロ)
などが思い出されて、楽しみながら続いています。
20世紀スピーチ集もスペイン民主化論文も、学習したからと言って、現実には
何の役にも立たないのですが、やること自体が楽しいので、何とか続いています。
佐藤一斎が「言志四録」で述べているような「老いて学べば、則ち死して朽ちず」
になるかは分かりませんが、老学はやっていて楽しければ、それで十分だと思いますね。(笑)