銀行員時代の友人に、久しぶりに会ったときに、
「今、何してる?」と聞かれて、
「定年前ご夫婦を対象に、FPとして老後の資産形成アドバイザーをやっている」
と答えたところ。
「つまり、人生相談か」と言われました。
私は、新聞のコラムにあるような、人生相談業を始めたつもりは、全くなかったのですが、
考えてみれば、今やっていることは、老後生活の人生相談といえるでしょうね。
友達に言われてから、人生相談の良いアドバイーとはどういう人なのかを、自分なりに考えてみました。
私が30代の後半から、40代にかけて、最も興味があったのは、キャリアについてです。
当時は金融危機の真っ最中というタイミングで、しかも銀行は50歳くらいから
(役員に昇任する人以外は)次々に外部に出向させていました。
銀行から外部に出向した場合は、金融関連の仕事に就く人もいましたが、全く無縁の仕事を
紹介される人もいました。
銀行に入社以来のキャリアと、その時の派遣先の状況を見て、適当な出向先を
銀行の人事部が仲介してくれるのですが、私は、自分のキャリアは
自分でコントロールしたいと強く考えていました。
そこでハマったのがキャリア論です。
たまたま、キャリアを研究していた友人の著作を読む機会があったので、
数十年ぶりに連絡して、いろいろと教えてもらいました。
その友人は、もともと心理学を研究していたので、紹介してもらった中の一つが、
エリクソンのライフサイクル論です。
エリクソンは、人生の発達段階を8つに分けて、それぞれの段階を論じています。
しかし、初めの5段階は18歳くらいまでの期間をカバーしていて、次が40歳くらいまで、
第7段階が65歳まで、最後の段階が65歳以上となっています。
この説によれば、40歳から65歳までの第7段階は、世代というものを強く意識するようになって、自分が蓄えてきた財や経験を次世代に引き継ぐことを考えるようになります。
しかし、エリクソンによれば、直前の第6段階から、上手く自己の内的な変化を遂げずに、あくまで自分中心に物事を考えているひとは、第7段階に移行できずに留まってしまい
停滞に陥ることになります。
(例えば、運よく出世して、仕事が忙しい人?笑)
60歳前後に、自分の周囲にこのような人を見かけるようになったこともあって、
定年前のご夫婦に、定年退職前後の自分の経験を役立ててもらえるようなアドバイザーになろうと思ったのが、FP受験の切掛けでした。
第7段階を過ぎて、65歳以降の第8段階では、社会的な責任という肩の荷を下ろして、これまでの人生を振り返り、自己の統合を図ります。
エリクソンは、自分を振り返る中から、人生に対しての叡智が生まれてくると言いますが、
第8段階で自己統合が上手くいかない人には、残念ながら絶望が訪れます。
そうならないためには、やはり第7段階で、上手く意識の切り替えをしておく必要が
ありますね。
尚、エリクソン博士の共同研究者だったエリクソン夫人は、夫の死後に、第9段階として80代以降の段階を加筆しています。
そこには、肉体の衰えによる自律の欠如に対して、衰えという事実を受け入れ(受容)、
周囲の人たちとの基本的な信頼関係を築くことの重要性を説いています。
人は、生れ落ちてから、お金と密接に関係して生きてきます。
しかし、赤ちゃん、幼児期、学生期くらいまでは、親世代が扶養してくれているので、あまりお金を意識することはありません。(家庭環境によりますが)
お金が生活に関係してくるのは、主に社会人になってからです。
しかし、独身の方や、結婚前の若い時期は、お金以外に考えることや、やりたいことが
いっぱいあるでしょうから、日々の生活を送るなかで、手元にあるお金のほとんどを使ってしまう人もいるでしょう。
ところが、結婚、出産、育児、教育を経ながら、転職、自宅取得、役職定年となってくると
自分の生活とお金が、徐々に密接に関係してきます。
「お金が足らない、困ったなあ」と悩むことが増えます。
定年退職後は、それまで蓄財したものと、公的年金が主な収入になります。
つまり、現役時代と違って、収入の「伸びしろ」が少なくなります。
60歳近くになり、収入の伸びが少ないお客様への資産形成アドバイスをするのが
私の仕事です。
まさに、人生相談ですね。笑
お客様とのご相談では、いろいろなテクニックの話も出るのですが、それ以前に、
最も大切なのは、先ほどのエリクソン夫人が言っているように、家計の現実の数字と、
将来予測の数字をお客様に正しく受け入れていただくことです。
そのためには、アドバイザーへの、基本的な信頼が必要になります。
見ず知らずのお客様と、人間的な信頼関係を築くには、どうすればよいか?
たとえ、私を信用していただいても、お金の相談をしても大丈夫という、信頼を得るには
どうしたらよいか?
今のところ、これといった解答はありませんが、地道に活動を続けていくことが
一番の早道かなと考えております。