昨今は「定年本」が大流行りですが、勢古浩嗣さんの著書「定年バカ」を読むと、所謂「定年本」の品定めをしています。
勢古さんご自身の理想の「定年像」と比較して、各「定年本」を品評されています。これはこれで面白いのですが、実生活の参考にはなりにくいので、僕が敬愛する大江英樹さんの最新著作「定年前」と、定年後研究では定評のある楠木新さんの著作「定年後」を読み比べてみました。
僕は何かの分野を調べたい時には数冊の関連書籍を買ってきて一気に読むようにしています。
その理由は、一つに分野の基本事項は共通で、どの関連本にも共通事項の7~8割が書いてあるからです。
逆に言えば、どの本にも書いてあることがその分野の基本的な事項なのです。
大江さんの著書も楠木さんの著書も、取り上げ方が必ずしも同じではないですが、共通の事項が沢山あります。
定年後の仕事、異性との付き合い方、地域への交わりなどです。
その中でお二人が最も重要だと指摘されているのが、定年前の準備です。
大江さんも楠木さんも、定年前の準備は50代(できれば40代)から始めることを推奨されてます。
40代といえば現役バリバリで仕事ばかり、たとえ50代になっても定年後のことなど考えてもいない人が多いと思います。
それでもお二人が早期の準備を進める理由は、(特に男性サラリーマンの場合)
定年を期に人生がそれまでと全く異なってしまうことがあるからです。
詳細は両書をお読み頂くとして、僕の個人的経験からみても定年後の人生は現役人生と全く異なります。
現役の時は、「定年後の人生を幸せに過ごす為には、お金が必要十分条件だ」と考えている人が多いかもしれません。
でも実際に定年を迎えてみると、お金の問題は思ったほど重要ではなくて、
男性サラリーマンの場合には「孤独」が一番の課題に踊り出ます。
それまで沢山もらっていた(かもしれない)年賀状の激減、仕事上の電話やメールの激減、友人と思っていた仕事上の知人との絶縁など「がっかり」することが頻発する懸念があります。
結婚している人ならば、家庭での配偶者や子供との関係が変化することもあるでしょう。
そこに両親の介護(4人かもしれません)、相続などを契機とした兄弟や親族との軋轢などを自分一人で対応せねばならないとすると大変です。(仕事が忙しすぎて、兄弟や親戚との意思疎通が出来ていなかったという前提ですが)
現役時代は、例えば仕事上の課題やトラブルは、自分一人だけではなくて上司や部下と一緒になって解決しようとします。
でも定年後の個人の問題(例えば孤独)は誰も助けてくれません。
助けてくれるとすれば家族でしょうね。
また定年後の人生設計についても、個別論については有料コンサルタントを別にして、誰も踏みこんでアドバイスしようとはしません。
2つの著作を読んでみて、著者たちは定年後に発生する様々な課題に対処するために、社会との絆、家族や友人との絆を結んでおくことが定年前の一番重要な準備であると主張されているのではないかと思います。
ここまでは書評もどきですが、天邪鬼な僕としては少しだけ言いたいことがあります。
「世の中には人と繋がることが嫌いな人や、人と群れることが出来ない人がいるでしょう」
このような人たちはどうすればよいのか?
そのような人たちはきっとお互いがわかるので、そのような人たち同士で「ゆるい繋がり」を作っていけば良いのではないでしょうか?
もちろん気に入らなければ「孤独」を貫けばよいのですが、孤独を愛する人たちも、結局は人間なのだから、生きていくうえで他者との接触が必要だと分かっていると思います。