8月11日、日本FP協会奈良支部の研修に参加しました。
研修のテーマは「キャッシュフロー」です。
キャッシュフローに関しては、個人的に下記の思い出があります。
1980年代後半のバブル期に東京で銀行勤務をしていて、スワップ取引を担当していましたが、
スワップ取り引きの「肝」はキャッシュフローでした。
金利スワップを例に挙げると;
変動金利のキャッシュフローと固定金利のキャッシュフローを交換するのですが、
元本金額が同じでも変動金利と固定金利という全く異なった数字が、同じ価値で交換されることが不思議でした。(苦笑)
慣れてくると、変動金利と固定金利の交換レートは人為的に決定されるものでは無くて、全てマーケットが決定されることが分かりました。
当時は銀行が変動金利の出し手だったので、銀行がスワップの相手方の固定金利を払うのですが、
キャッシュフローを交換する相手が、もしも銀行の変動金利のキャッシュフローを支払ってくれなかった場合の対応策を、
信用リスクとマーケットリスクの両面から、思いつく限り想定して契約書を作成したのが思い出ですね。
次に1990年代のアメリカに赴任して、今度は不動産のキャッシュフローを読み解く立場になりました。
テナントの賃料を基本にして、修繕費を始め保険料や手数料を加味してネットのキャッシュフローを計算します。
そこから貸し出しの金利を払えるのか?とか貸し出し元本を返済できるのか?とかの議論を、
将来のキャッシュフロー予測をもとに長い時間をかけて議論していましたね(苦笑)
この場合のキャッシュフロー予測は、膨大な前提条件を一つづつ決めていけば、コンピューターが計算してくれます。
つまり現実の不動産のキャッシュフローを前提にして、将来のテナント入退去や不動産マーケットがどうなるかを予測して計算します。
不動産を家計に置き換えれば、FPの業務の基礎になる家計のキャッシュフローと同じですね。
でも不動産のキャッシュフロー計算の大きな目的は、売却した場合の価値を想定することでした。
例えば20年先までのキャッシュフローだと現在の不動産の価値はどれくらいになるだろうかという議論でした。
(売ったらどれくらいもう儲かるか?損するか?)
FPが計算する家計のキャッシュフローは、現在価値に引き戻して人的資本の価値を計算するわけではないので
やり方は同じでも使い方が異なりますね。
これらの経験から、僕がキャッシュフローに関して得たことは、
「前提条件が変われば、キャッシュフローは大幅に変わる」ことでした。
例えば今日の研修のFPの例で言えば、
将来的に給与が増え続ける前提でキャッシュフローを作っても、リストラや病気、転職など不確定要因は沢山あります。
家族にしても、子供が産まれると産まれない、産まれても何人か?ではキャッシュフローは大きく変わります。
こういうとキャッシュフローはいい加減のように聞こえますが、
家計のキャッシュフロー作成の良いところは、
作成する過程で自分が自分の人生をどのように考えているかに向き合えることです。
自分が自分自身の人生や妻や子供の将来に関して、
どのように考えているかが数字という客観的な媒体を通じて否応なく面前に迫ってきます。
独りよがりだったり、見通しが甘かったりすると、数字が如実に現実を現わしますね。
個人的な経験では、一生懸命考えたキャッシュフローが予想通りに実現したことは皆無です。
短ければ一年後には全く変わったキャッシュフローになっています。
それでも僕は性懲りもなく5年ごとくらいに自分のキャッシュフローを作成しています。
実際にイベントを入れて、予想収入や予想生活費などを記入して、
しばらく自分の支払い状況を管理していると、思っていたのとは全く違う支払が発生していることが良くあります。
でもそれでいいと思います。
キャッシュフローは自分の固定観念を裏切って、自分の人生の実態を見せてくれていると考えて、
実態に合わせて生活を考えることにしています。