サラリーマンにとっての私的年金の第一番目は企業年金です。
企業年金は年金という名称ですが、実際は給与の後払いに当たります。
一部の大企業は退職一時金と年金を両方とも給付する場合があります。しかし多くの大企業や中堅中小企業では、退職金一時金と年金の選択制や、退職金も年金も両方とも無いケースがあります。
また制度があっても企業によって企業年金の仕組みが異なることが多いのです。少し古い情報ですが、2016年10月22日付の週刊ダイヤモンドは退職金と年金の特集記事を掲載しています。
これによると退職金はかなり減少の傾向にあるようなので、公的年金とともに企業年金も将来的に増額の可能性は低そうです。
企業年金の仕組みには確定給付年金と確定拠出年金があります。
確定給付型は退職者に定額の給付を与えるというもので、確定拠出型は企業が定額を拠出するというものです。
したがって拠出では退職者が企業からもらった一定額を資産運用する必要があります。ちなみに給付は現金ではなくポイントなどでくれるので税金は発生しません。
確定給付型のほうが退職者にとって楽なようですが、企業は従業員に約束した確定給付を支払うために必要ならば資金を利益から拠出しなければなりません。もしも業績が悪くなると大きな負担になりえます。
それに企業業績が悪い時と年金の利回りが低い時が重なれば、企業の財務状態をダブルパンチで悪化させます。
確定拠出型だと、たとえ企業が倒産しても、それ以前の資金は保全されています。
最近の傾向として企業の財務負担の平準化と従業員の年金原資の保全の意味から、企業年金は確定給付型から確定拠出型に移行する傾向があります。結果的に従業員は資産運用に関心を持たざるを得なくなります。
よく新聞や雑誌で日本人の資産構成について米国人と比較されています。
一般に米国人はあまり国家を信用していないし管理されるのが嫌いなので、自助努力で資産形成を行います。投資をするにあたっては、税務面等での国家の支援は日本よりはるかに充実しています。
米国民の納税者のほぼ全員が自分で税務申告を行うので、自分の課税所得や税額を把握し合法的な節税への関心も高く、普通の会話にtax(税金)という単語が頻繁に出てきます。
逆に言えば、資産運用を含めて自助努力をしない人は誰からも何もしてもらえない国でもあります。
転職する人が多いためか、一般的に企業には退職金も無く、公的年金や企業年金を補完的に考えて投資で資産形成をすることが普通です。
高校生になると学校の授業で「人的資本」「負債」「実質金利」「各種の投資」「リスク」などについて学習します。
日本でも国家財政が窮迫して公的年金の給付が切り下げられたり、企業の財務に余裕が無くなってくると、米国のように国家が税務上で必要な支援は行うから、資産形成は各自でやってくれという方向に進むのではないでしょうか。
国民年金と厚生年金の給付額は「ねんきん定期便」にまとめられていて、比較的わかりやすいのですが、企業年金は例えば有期年金と終身年金に分かれるなど各企業で仕組みが異なっています。
これはバブル崩壊後の運用難の時に、各年金組合別に様々な改変が行われたために、給付を受ける年次によって給付額や支給方法が変化したことに起因します。
自分自身の企業年金の内容を詳しく知りたければ、自社の総務部か人事部などの担当部署に照会する必要があります。
電話などで説明を聞くと教えてくれますが、かなり専門的な単語が入り、込み入った説明をされることがあるので、あらかじめ書籍などを利用して年金の仕組みの概要を頭に入れてから電話したほうが良いでしょう。