• 定年男子のランとマネー

トランプ大統領(以下トランプ氏)の関税政策には、いろいろな見方がありますが、一般的には批判的な意見が多いように感じます。

何故、このような政策をとるのかについても、トランプ氏の本心が読めないこともあって、

様々な意見が飛び交っているようです。

私は、何の専門家でもないので、やや無責任に、思いつくままの見方を書いてみたいと

思います。

<関税障壁>

まず高関税政策ですが、もともとトランプ氏は貿易赤字を解消したいという考えが強いようです。

そして、貿易赤字の原因を、純粋に経済学上の比較優位の理論ではなくて、各国の商習慣に

含まれる、実質的な非関税障壁にも求めているように見えます。

例えば、米国市場で日本車が市場を席巻しているのは、日本の安全基準が厳しすぎて

(おそらく不必要に厳しいと考えている?)日本の基準を引き下げれば、米国車は十分に

太刀打ちできるはずと思っていそうです。

「石油を掘りまくれ」と言っているところをみると、化石燃料に対する欧州の厳しい

環境基準についても、同じように考えているでしょう。

一方、中国については、主要な産業に対する国家の補助金が、正当であるべき商品価格の

不公平な引き下げとなり、米国産品の競争力を奪っていると考えています。

何でも米国基準が公正であるという、トランプ氏の考え方の是非は、ひとまず置くとして、

こうして引き上げた関税による輸入品価格の高騰は、米国の消費者が負担します。

しかし、関税として政府の懐に入ったお金はどう使うのでしょうか?

トランプ氏が選挙戦で述べたとろでは、減税の財源にするようです。

つまり、これ以上の米国債の発行をせずに、関税を原資として減税を行うのです。

そして、関税を引き上げることで、競争力を失った輸入品に対して、米国産品が再び

市場競争力をもち、米国の製造業が復活して、工場労働者に職が与えられることになります。

これがMAGAであり、トランプ氏の岩盤支持者が信じていることです。

これに対して、「ホントかよ?」というのが、米国内外の批判者のコメントですが、

聞くところでは、共和党トランプ支持者は、米国内に8000万人存在するという、

キリスト教福音派と重なる部分が多いようです。

彼らのイメージは、聖書に書いてあることを、そのまま信じる敬虔なプロテスタント信者で、

なかには「ノアの箱舟」が歴史的事実と信じているという、(進化論者でなくとも)

私には信じがたい人もいるようです。

トランプ氏とその支持者の持つ考え方が生まれてきた背景には、私の意見では、米国の

「例外主義」の影響があるように思います。

例外主義とは、「その国是、歴史的進化あるいは特色ある政治制度と宗教制度の故に、他の先進国とは質的に異なっているという信条として歴史の中で使われてきた概念である。その違いはアメリカ人の仲間の間で断定的優越性として表現されることが多い」

アメリカ例外主義 – Wikipedia(2025/4/25 Wikipedia)

<移民排斥>

さて、トランプ氏のもう一つの目玉政策は、「不法移民追い出し政策」です。

不法に入国してくる移民を拒絶し、不法に入国した移民を米国から追い出すわけです。

先程の関税政策と併せると、米国の国境に高くそびえる移民排除の壁と目に見えない関税の壁に守られた国内で、選ばれた米国人だけが、平和に幸せに暮らしていくというイメージが浮かびます。

私なりの見方ですが、米国人は自分たちの原点を、英国での迫害から逃げてきた「建国の父たち」に求めているように思います。

つまり、白人男性+プロテスタントです。

建国当初は、米国は白人だけの世界でしたが、黒人奴隷の輸入によって、白人男性に、黒人に対する強い深い差別意識が生まれます。

南北戦争を経て、表面的には黒人差別が収まったかに見えますが、米国が移民国家であることと対象的に、既得権益を守る為か、新しい移民を排斥する動きは続きます。

日本人も、第二次世界大戦中に迫害されました。

最近は、中南米を中心とするヒスパニックが、不法移民を含めて人口の相当の部分を

占めるまでになっています。

逆に言えば、建国以来マジョリティを占めてきた白人が、このままではマイノリティに転落することが、ほぼ確実になっています。

これは、決して白人の人口が減少の一途というわけでは無くて、先進国では珍しく人口が増加している米国の中で、増えている人口の大部分が白人以外ということなわけです。

いままで。マジョリティとして「例外主義国家」米国を支配してきたプロテスタント白人が、

はじめてマイノリティつまり支配される側に転落します。

おそらく、このことは自分たちの優位性を信じてきた白人たちにとっては、大きな「恐怖」になる

と思われます。

歴史を振り返れば、南北戦争は、建国以来、議会を支配し、ほとんどすべての大統領を輩出してきた南部が、移民による人口増加で新しく成立した各州が主に北部に付いていくことで、南部が議会で劣勢になり、ついに大統領まで北部出身のリンカーンが選ばれたことが直接の原因です。

同じことが、今後は米国内で白人とその他の人種の間で起こっています。

こういう風に考えれば、マイノリティに転落する(と恐怖している)プロテスタント白人の

トランプ氏を支持し信奉する姿勢は、トランプ氏の政策が成功するか否かにかかわらず

「米国例外主義」を維持するため、少なくとも当面は変わらないと思います。

<これから>

トランプ氏は(普通であれば)4年後に退陣します。

例え移民を拒絶しても、白人のマイノリティ化が、このまま止まらなければ、米国の「壁の中」政策が

継続する可能性は高いと思います。

さらに米中対立も継続するならば、世界経済の発展はスピードダウンして、グローバル化は

逆回転します。

これは米ソ冷戦期と同じ構造ですね。

米国が築く関税の壁と国境の壁は目に見える壁ですが、目に見えない投資の壁によって、

米国に集中していた世界の富は分散されるでしょう。

言い方を変えれば、米国という信用力抜群の組織に、世界中が与信を与えていたのですが、

米国の信用力が低下したので、マネーは世界のあちこちを彷徨うことになります。

米国への与信が低下することは、米国が信用の対価として得ていた「基軸通貨ドル」が

揺らぎ、米国債保有のメリットが低下することになりますね。

これは米国の衰退ともいえる現象です。

歴史を見れば、ローマ帝国の昔から、巨大帝国はピークを迎えた後で、数百年かけて衰退していきます。

もしも米国が衰退するとしても、100年以上の時間がかかるでしょうから、当面は米国主体に物事を考えても良いと思いますが、中国・インド・東南アジアなどとの関係にも

充分な注意を払った方がよさそうな気はしますね。


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