現役の会社員のころ、50歳に近づくと会社から「たそがれ研修」と呼ばれる、定年退職後のキャリア研修を受講せよと言われて、同期入社のほとんど全員が、研修所に集まり、講師の話を聞き、テーマを決めた議論を行いました。
研修の最後のトピックスは、まず「妻からの手紙」次いで、退職後の自分の姿を絵にするの
2つでした。
ほかの人の「妻からの手紙」は面白がって聞いていましたが、自分の分は、そこで初めて
開封するので、果たして良いことが書いてあるのか、恨みつらみが書いてあるのか、緊張の
瞬間でしたね 笑
幸いに、妻は優しい手紙をくれたので良かったのですが、もう一つの「自分の将来像を絵にする」は多少悩みました。
自分は定年退職後に、仕事をしたいのか?何もしたくないのか?
仕事をするならば、どのような仕事をしたいのか?
正直なところ、全くイメージが湧きません。
会社員で40歳代の終わりといえば、そこそこの役職に就き、毎日の業務を滞りなく遂行することで精一杯で、とても将来の自分のことまで考えている余裕はありません。
おそらく、会社もそれを見越して、短時間とはいえ、我々を業務から切り離して、自分のことを考える時間を作ってくれたのでしょう。
いろいろと考えて、私が行きついた結論は、教室のようなところで、前に立って話をしている自分の絵です。
イメージとしては、経験や知識を生かして、学生に授業するような感じですね。
その後、しばらくして会社を退職して、2つほど会社を変わりました。
スピーチする機会は何度かありましたが、セミナー講師を務める機会はなかったです。
定年を過ぎて、スタートアップ企業に勤務しても、そんな機会は無かったのですが、
ほぼ同時に始めたフィナンシャルプラナーで、たまにセミナーの講師を務める機会が
出てきました。
自分の書いた絵と、少し似てきました。
そのあと、スタートアップ企業を退職して、現在の大阪府市の「国際金融都市大阪」
プログラムのコンサルタントになったのですが、大阪府市やほかの機関が主催する
各種イベントで、自分の担当する業務内容などを紹介するプレゼンテーションを行う機会が増えてきました。
自分の描いた絵に、益々似てきましたね。笑
そんなことをしていると、ある所から「大学のシニアコースで国際政治の授業してくれ。
担当は米国」という依頼があり、まさに現役時代に自分が描いた絵が実現するなと思って
引き受けることにしました。
授業といっても、何人かの講師が1年間のプログラムを分割して受け持つので、私の担当は
90分授業が4回のみです。
今年は9月30日から10月28日まで、毎週月曜日の午前中に、大学まで行って授業しています。
50歳手前で描いた絵が、70歳で実現することになったのは、何かのご縁だと思って、
自分が興味があり、調べてみたいことをお話ししています。
テーマは「米国の政治の成り立ち:共和党と民主党」「米国の分断:人種差別と貧富の格差」
「やさしい地政学」「米中対立」最後に、ことしの大統領選挙について話します。
昨年から授業を担当しているのですが、相当な量の書籍を読み、新聞記事に目を光らせ、
YouTubeなどで知見を広げるという、まさに「教えることが、もっとも勉強になる」
ということを実践しています。
50歳手前の「たそがれ研修」では、かなり直感的に自分の絵を描いたのですが、20年経って、実現してみると不思議な感じがします。
「熟慮」「沈思黙考」など「考える」ことを現す表現は沢山ありますが、大事なことは
案外「直観」に従ったほうが、素直な結論が出て良いのかもしれませんね。