企業には多数のステークホルダーがいます。
ステークホルダーとは、企業が経営をするうえで、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者のことです。
具体例を挙げると下記になります。
クライアント、従業員、株主、地域社会、行政機関、金融機関、各種団体、政府、債権者
ステークホルダーの注意点は、利害関係者といっても、必ずしもお互いの利害が一致するとは限らないということです。
更に、「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」が存在します。
直接的ステークホルダーは、従業員、消費者、クライアント、株主、金融機関
間接的ステークホルダーは、政府、地域社会、従業員の家族などです。
(出典:ステークホルダーとは?ビジネス用語の正しい意味と使い方|フレマガ ~新社会人・新入社員をサポート~ (smbc-card.com))
現在世間を騒がせている、ジャニー喜多川氏(メリー藤島氏も含む)とジャニーズ事務所
事件を、企業のステークホルダーに当てはめて考えてみましょう。
事の発端は、海外のテレビ局が、ジャニーズ事務所の創業者社長であるジャニー喜多川氏の
長年に及ぶ性加害を報道したことです。
これが未成年への人権侵害事例としては、「人類史上最大?」の事件として認識され、
日本国内で大騒ぎになりました。
これに反応して、ジャニーズ事務所のクライアントである(主に)大企業が、対応にバラツキはあるものの、仕事の発注を停止したため、ジャニーズ事務所が実質的な業務停止に追い込まれました。
クライアントの発注停止により、従業員であるタレントたちが、仕事を失うか、将来の契約更新が見込めない状態となったわけです。
直接の消費者であるタレントのファンは、贔屓にしているそれぞれのタレントの行く末を心配して、様々な思いを持ち、一部はメディアを通じて発言を行っています。
1人株主であるジュリー藤島氏は、事態の打開のために、代表取締役を引責辞任し、過去に自身の叔父から性加害に遭った被害者たちへの補償を表明、併せて、母親と叔父から
引き継いだジャニーズ事務所を清算し、自らも(巨額の?)相続税を支払う意向を示しました。
つまり、前社長からは、この事件で最大のステークホルダーである、性被害者たちへの補償の意思と、贖罪を含めた(と想像される)自らへの金銭的な罰が示されたわけです。
また、従業員であるタレントは、実力に応じて、自由に活躍の場が選べることになり、
実力が不足するタレントには、エージェント会社がサポートするという形ができたわけです。
マネージャーなどの裏方も同様だと思います。
細かく言えば、藤島氏の後任の代表取締役に、タレント出身者を当てたことが、過去との
繋がりを絶っていないなどの批判はあるでしょうけれど、実際問題として、このような仕事を引き受ける適任者が、他に居なかったのでしょう。
先程の、ステークホルダーの考え方から言えば、ほぼすべてのステークホルダーに対して
対応と提案がなされたことになります。
(ビジョンだけ示されて、具体化していないものが沢山ありますが)
ところで、大きく騒いでいるメディアは、ステークホルダーのどこにいるのでしょうか?
実は私は、たまたま仕事が非番でヒマだったので、10月2日の会見のほとんどをテレビで観ました。
テレビ画面では、壇上の4人は、記者たちの質問にできるだけ冷静に丁寧に答えようとしていました。
それに対して、質問する記者たちの様子は、時間が経過するごとに騒がしくなり、司会者や
登壇者の制止も聞かなくなってきて、あたかも前夜観た、杭州アジア大会でのサッカー日本対北朝鮮戦の北朝鮮チームを観ているかのようでした。
冒頭の疑問に戻ると、こんなに興奮し激昂しているメディアの人たちと、ジャニーズ事務所との利害関係は何でしょう?
考えられるのは、タレントたちの情報をファンや一般の人たちに流すことで、自分が所属
するメディア媒体の売り上げが伸長したことです。
それなら、タレント活動が自由になることで、売り上げに多少の凹凸があるでしょうが、
基本的にはメディアの仕事は守られたわけです。
報道するという、メディアのミッションについては、たぶん、直接的ステークホルダーであるファンが、メディアを通じて一番聞きたいのは、自分たちの“推し”タレントの今後の活動と、過去の楽曲が
これからも使用できるか?
などでしょう。これについては、具体化が不十分ながら、回答案が示されました。
一部の記者は、タレントの活動の自由を保証することを確認する回答を、新社長から
引き出していました。
クライアントである大企業は、自身が人権侵害企業というイメージを持たれたくないので、
タレントとジャニーズ事務所を完全に切り離すことを望みました。これを報道することは
意味があります。これについても、会社清算という形で、最終形が示されました。
(クライアントが、これで納得するかは不明です)
これ以上のことで、メディアが間接的なステークホルダーとして、この事件を世間に伝える使命があるというのであれば、ルールを守って質問すればよいだけです。
自分が当たらなくても、他者の質問が参考になることもあるでしょう。
会見の最後の方で、執拗に質問した記者は、新しい代表取締役の過去(未成年時代)の
性加害につき、深く関心を寄せていたように見えました。
こういうことは、仮にあったとしても、常習性がなければ、やられた方は覚えていても、
やった方は忘れがちです。
やられた方が忘れられないならば、二人だけで会って話すことが、普通の人同士ならば、
最も穏便で普通の解決方法でしょう。
第3者の記者が騒ぐことでもないし、突っ込み過ぎると、公の場での新社長への性加害
ということにもなりかねません。
数十年前の出来事があるから、新社長にはふさわしくないという論理は、私にはよく理解
できませんが、性加害の再発性に乏しいのであれば、新社長の性癖などは、各ステーク
ホルダーにとり、重要性や優先性が劣るものだと思います。
それよりも、今頃になって、メディアが蜂の巣をつついたように興奮や怒りを現すならば、何故、以前には興奮も怒りも現さなかったかを、誰かに説明して欲しいものだと思います。
この事件を「人権侵害」として捉えて、糾弾すべきということであるならば、ある意味で
ジャニー喜多川氏の性加害を黙認し、結果的に助長したとも考えられる、メディア自身が
反省や具体的な「再発防止策」を発表しなければ、もしも、将来同じような出来事があっても、
メディアがこれを、再度、結果的に助長する可能性が高いと思いますね。
ご参考までに、マスコミの「手のひら返し」についての記事(窪田順生 2023/9/28付
ダイヤモンドオンライン)を貼り付けておきます。
手のひら返しの「ジャニーズ叩き」を叩かれる!マスコミは日本人の醜い部分を映す鏡だ | 情報戦の裏側 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)