8月20日、FIWA(みんなのお金のアドバイザー協会)の月例セミナーに参加しました。
テーマは、岡本和久さん「「ウォール街のランダムウォーカー」を読みとく第1回」と
中野 晴啓さん「私が目指したい資産運用業界の理想」の講演、その後に岩城みずほさんを
交えたディスカッションでした。
岡本さんのお話は、バブルの歴史についてでした。
中野さんのお話は、ちょうどセゾン投信の会長を退任された直後ということもあって、
少し個人的なことも含めて、資産運用と資産運用業界について、1時間ほど話されました。
中野さんの個人的な話は、有料セミナーかつオフレコということで記載できませんが、巷間、
言われているところ(報道されているところ)から、大きく逸脱した話はなかったように
思います。
中野さんの話の中で、何度か参照され、強調されていたのが、2023年4月に金融庁が
公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」です。
金融庁がこのレポートで指摘している、資産運用業界の問題点は
「わが国の資産運用業においては、資産運用会社の「事務」と「運用」、販売会社の「商品提供」と「アドバイス」が一体的に運営されていることが多く、同一の機能間の競争による高度化と効率化が遅れ、新規参入が進まない要因にもなっている。」
「家計・個人向けの情報開示の不足(情報の非対称性)や一部のアセットオーナーの専門性・人員不足等も指摘されており、資産運用に対する家計・個人や企業の理解は必ずしも十分に進んでいない。」と散々です。
さらに、追い打ちをかけるように
「わが国の大手金融機関系列の資産運用会社では、2022年12月末時点で、在任期間が「3年未満」の経営トップが多く、グループ内他社からの異動後、「3年未満」で経営トップに就任する例が多い。海外の大手資産運用会社では、在任期間が「5年以上」の経営トップの割合が多く、「勤続10年以上」の内部昇進の割合が高い。」
「日系大手は、資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているとの懸念を持たれるおそれ」
つまり、資産運用会社は、顧客から資産を預かって運用しているのですが、ややもすると
自身の儲けを欲しがる販売会社(資産運用会社の親会社)の指示に従い、顧客の儲けを
あまり考えない運用を行う懸念があるということになります。
資産運用会社の忠誠心は、大切な資産を預けてくれたお客(個人)に向かうべきなのに、
自分の上司や元上司である親会社への忠誠心が顧客への忠誠心に優先するということが
起こります。
これは完全な「利害対立」で、ビジネスではあってはならないことです。
この利害対立が蔓延する資産運用業界で、中野さんはセゾン投信という装置を創り、
「長期投資による運用をしつつ、その優位性を直接投資家に売って、積み立て投資の資金を導入するビジネスモデル」で、「積み上げられた資金から得られる信託報酬をテコに
新規の零細投資家のリテラシー向上に取り組」んで来られました。
(引用:日本経済新聞電子版 大機小機 2023/8/24)
しかし、中野さんが、セゾン投信での長期にわたる努力の結果、6000億円の資産を積み上げたにもかかわらず、親会社のクレディセゾンは中野さんを解任し、資金をより多く集めるモデルに転換したようです。
これはつまり、セゾン投信の販売チャネルを多様化して、販売力を強化し、多くの顧客から資産を集めようということです。
(金融庁が懸念している)典型的な親会社主導の人事戦略による、販売方法への転換です。
今後、セゾン投信がどうなるか、中野さんが何をされるかは分かりませんが、一つの実験と
その結果検証をする事例として、当分の間は2者の動向を注視していきたいと思います。