必要があって、本多静六著「私の財産告白」と、ビル・パーキンス著「Die with Zero」
を再読しました。
かなり以前に読んだ記憶では、本多静六は、収入の25%を天引き貯蓄に回して、残りの
お金で生計を立てるという勤倹節約のアリ派、ビル・パーキンスは、人生の中年期から、
蓄えた財産の取り崩しを開始するというキリギリス派と思っていました。
実際に両書を再読してみると、2人の議論の重心は、お金を貯めることよりも(もちろん
出発点として大変重要ですが)、いかにしてお金を使っていくかにおかれていました。
ビル・パーキンスがそう言うのは、わかります。
何せ、「死ぬときには、お金をゼロにしろ」と言っているわけですから。
しかし、勤倹貯蓄派の本多静六までが、子供に最低限以上のお金は残すべきではないと言っているのは、記憶違いとは言え、意外でした。
実際の本多静六は、東京大学教授を60歳で退官するときに、自分の財産のほとんどを
匿名で寄付してしまったそうです。
わずかに自己の名前が現れた寄付も、顕彰碑の式典への出席を辞退し、それでも要請されたので、やむなく息子に代理出席させました。
徹底していますね。
著書を読むと、特に人見知りでも、内向的でもなさそうなので、匿名にしたのは、おそらく
現実的な理由でしょう。
推測ですが、世間に寄付のことが喧伝されると、(全財産を寄付してしまったにも拘わらず)さらに寄付や借金を頼みに来る輩が沢山いるので、これを避けたのだと思います。
ある調査では、日本人が一番お金持ちなのは、亡くなる直前だそうです。
マスコミをはじめ、金融機関などで、散々「老後不安」を煽られ、爪に火を点す用に
節約して貯めたお金を、ほとんど自分の楽しみに使うことなく、亡くなっていく姿が
目に浮かんできます。
一般論ですが、人生で一番お金が必要なのは、子供の教育費が嵩んでくる40代後半から
50代前半ではないでしょうか?
ちょうどそのころ、親世代は70代後半から80代前半で、そろそろ介護の心配が現実化
する年代です。
そのころに、親世代が、例えば財産の半分を子供世代に譲ってやれれば、子供世代は随分
生活が楽になるでしょう。
ところが、そんなことをする親世代は、どうも少数派のようです。
それには、いろいろな理由があります。
「このお金は、あくまで自分のお金で、老後の葬式代金にとっておく」
―(この言葉を聞いたときに、この人は、何処で、どのくらいの規模の葬式をやるのだろう?
と思いましたね 笑)
「先にお金を渡してしまうと、そのあと自分たちの面倒を見てくれなくなる」
―(金の切れ目が、縁の切れ目というわけですね)
これらは、いずれも過去に実際に聞いた、高齢者の言葉ですが、ネガティブな意味で、お金の価値というか、力を信じている人が多い気がします。
もしも、子供や孫にお金を残してやりたいならば、先ほど書いたように、子供たちがお金を
必要としているときに渡してあげたほうが良いと思います。
そのための制度も、徐々に整いつつあるので、調べて利用しては如何でしょうか?
もしも、「児孫のために美田を買わず」ということならば、老後の必要資金を取り分けておいて、不要になりそうなお金を、本多静六のように、さっさと寄付してはどうでしょうか?
(ちなみに、ふるさと納税は、単なる税金の付け替えです)
と言いながら、古希(70歳)が視野に入ってきた私も、そろそろ老後資金、相続資金を
取り分けて、残ったお金(もしあれば)を、どのように世の中に活用してもらうかを
判断する時期に来ているのかなと考えたりもします。