先日、日本経済新聞電子版の「教えて高井さん」というコーナーで、高井編集委員と、
レオス・キャピタル・ワークス社の藤野さんが対談している動画が公開されました。
高井さんによれば、藤野さんとの対談動画は、毎年一回行われ、今年で3回目ですが、
このコーナーの「キラーコンテンツ」として、大人気のようです。
この動画は、約一時間に及ぶので、ご関心のある方は本編をご覧いただきたいのですが、
動画の終わりの部分で、高井さんが藤野さんに投資の視点について聞いたところ、
藤野さんから「美点凝視」という答えが返ってきました。
「美点凝視」とは、文字通り、投資したいと考える会社の「美点」を探して、
「じっと見つめる」ことです。
藤野さんは、この「美点凝視」を自分の投資極意の一つにしているそうです。
私は、銀行員時代に長らく「不良債権回収」業務に携わっていたからか、
会社の内容を見ると、すぐに「欠点」探しから始める傾向があります。
会社員を退職して、自由な立場から株式投資をやろうとしても、長年染みついた
「欠点ファースト」のスタンスは、正直なところ、なかなか治りません。
銀行員時代は、貸出先の変調や欠点をいち早く見つけて、債権保全の防御策を講じて
リスクを減らすことが最善の道と考えていました。
しかし退職後は、他者の欠点を見つけて、それをあげつらうことは、どうやら人間の本姓に根差した、最も簡単な行動のように思えてきました。(笑)
藤野さんが言うような、会社の「美点」を他人よりも早く見つけて、その美点が成長の種に
なりうるのであれば、気づかれないうちに投資するのが、大きく儲けるコツですね。
藤野さんは、動画では「美点」探しのコツまでは教えてくれませんでした。
ただ、藤野さんは「美点凝視」と「自分は投資するのか?」は分けて考えているそうです。
これから考えると、会社の美点を見つけても、それがすなわち投資する理由とはならない
ようですね。
考えてみれば、会社の「美点」が、会社の成長に貢献するものでなければ、
投資には向かないのでしょう。
しかし「美点凝視」という考え方は、会社だけではなく、人間にも使えそうです。
誰でも、好きな人と嫌いな人がいます。
なぜ、その人が嫌いか?と聞かれれば、(声に出して言わないにしても)その答えは、
すぐに、いくつか思い付きます。
では、なぜ好きか?と聞かれれば、どうでしょう?
美人だから、イケメンだから・・という外見の答えならすぐに出せますね。
でも内面的にはどうでしょう?
優しいから?
でも優しい人はたくさんいます。
それに、ある人に優しくても、他の人には厳しい人もいます。
才能があるから?
絵画や彫刻の才能のある人を好きな人もいますが、まったく関心のない人もいます。
この辺りに「美点凝視」の難しさがあるように思いますが、如何でしょうか?
例えば、自分の中で「美点」の基準がはっきりしていないから、
好きな理由が言えないのでしょうか?
考えてみると、日常生活で、自分にとって「嫌いなこと」を意識する機会は多いのですが、
可視的なこと(スポーツやファッションなど)以外で、「好きなこと」を意識する機会は
あまり多くなさそうな気がします。
この意味で、冒頭の動画は、私に「良い気づき」を与えてくれたと思います。