ネットの記事を眺めていると、「おっさんレンタル」というタイトルが、目につきました。
文字通り、おっさんを1時間1,000円でレンタルするサービスです。
このサービスは、西本貴信さんによって、2012年2月からスタート。すでに開始後10年が経過しています。
ちなみに、「おっさんレンタル」を利用するかたは、下記のURLをご覧ください。
利用者は、女性と男性が、7 : 3程度の比率で、利用目的は様々。
単純に、溜っている話を聞いてほしいという依頼から、猫探しや元カレの荷物の処分などが
あるようです。
加盟人数は約60名で、おっさんとして登録された場合には、月額加盟料10.000円の支払いが必要です。
レンタル料は、全額おっさんのものになりますが、1回で2~3,000円の収入ならば、
余程の人気「おっさん」にならない限り、「持ち出し」かもしれませんね。笑
(まったくお呼びがかからないおっさんもいるようです 笑)
CEOの西本さんが、応募してくる「おっさん」を面接して、感じたことは下記のようです。
平均利用は2~3時間ほど。おっさんを3000人ほど面接して気づいたのですが、肩書とかポストではなく、大人の男として“選ばれたい”という欲求を感じますね。求められたり、必要とされたいんでしょう。選考のポイントは人間性。優しい雰囲気のおっさんが売れ筋です。本業が役者のおっさんもカッコいいから引き合いがある。32歳から62歳までのおっさんを随時募集しています」(西本氏)
(出典:2016/3/26 日刊ゲンダイ
1時間1000円の“おっさんレンタル” 女性記者が試してみた|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
「おっさんレンタル」を利用する人は、単発のちょっとしたことを解決できるなら、
1時間1,000円程度くらい支払ってもよいという人たちなのでしょうね。
もう片方の「おっさん」自身はどうなのでしょう?
「おっさんレンタル」登録で、生計を立てようとする人は、まずいないでしょうから、
おそらく、誰かのお役に立ちたい、という気持ちがあるのでしょう。
それから、記事の中で西本CEOが言っているように、約60名の加盟者の中から
(男として)自分が選ばれたい、という気持ちも強いのでしょう。
別の言葉でいうと「承認欲求」ですね。
一般的に、おっさんになると、勤務先や家庭で、自分の承認欲求を満足させる機会が減ります。
その代わりに、例えば、Facebookへの炎上に近い投稿を行って、
たくさんの「いいね」を求めようする、
誰かに、なにかをしてあげたことへの、心理的な見返りを、
多少過剰に求めようとする
などの行動に出る人がいます。
「おっさんレンタル」に加盟している人が、すべてそうとは思いませんが、
誰かの依頼に応えることで、何かに貢献しているという自己満足感と
依頼者に喜んでもらえることで、他者からの承認欲求を満足させられるのであれば、
「おっさん」にとって、十分価値がありますね。
ただ注意すべきは、おっさんの承認欲求は、時として肥大することがありますので、
依頼者が普通にあらわした満足とお礼では、だんだんと満足できなくなる人も
いるかもしれません。
もう一つ言えることは、自分の自由時間に、自分のやりたいことが無い「おっさん」が
結構いるということです。
日本の中高年会社員は、上司からの指示で動く「指示待ち」人間が多いので、
誰かからの明確な指令がないと、何をしてよいか、何をしたら自分自身が喜ぶかが
わかっていない人が多そうです。
だから、「話し相手」「猫探し」などの、明確な指示があれば、安心して依頼者の依頼に
応えることができるのでしょう。
禅語に「随処に主となれ」という言葉があります。
これは、いついかなる時でも、リーダーシップをもって振るまえ・・
という意味ではなくて
「いついかなる時も主体性を持つこと、主人公であればどこにいっても行動に間違いはない、いく先々でその場所を自分のことのように思い、その場所を愛しなさい」
ということのようです。
(出典:https://www.mind-app.info/zuisho/)
この言葉は、臨済宗の開祖である臨済禅師が弟子たちに語った言葉です。
いついかなる時も主体性を持つことは、相当難しいことですが、
退職後の人生を有意義に過ごすために、大いに参考になる言葉だと思います。