昨年8月以来、ペンギンブックスの「20世紀スピーチ集」を、筆写しながら、少しずつ読んでいます。
この本は、1900年初めから2000年までの、秀逸と編者であるブライアン・マッカーサー氏が判断したスピーチを集めたものです。
最初は1899年4月10日、シカゴでのセオドア・ルーズベルトのスピーチに始まります。
ここでは、ルーズベルトは、「怠惰な生活を捨てて、困難と闘う生活をおくるべき」だと訴えています。
二度の世界大戦を含む、沢山の戦争が起こった20世紀を予見するようなスピーチですね。
現在、私が読んでいるのは、1940年でちょうど英国がヒットラーのドイツに宣戦布告をするところです。
それまでには、英国とアイルランド問題(アイルランド独立派が逮捕されて、裁判の判決前に無実を訴えたスピーチ。その後処刑)や、女性解放のために戦ったエメリン・パンクハースト(女性)のスピーチなどが掲載されています。
英米人以外では、マハトマ・ガンジー、スターリン、トロツキー(スターリンにより暗殺)、
ヒットラーなど、歴史の巨星たちの演説が続きます。
中でもヒットラーの演説は、ドイツ語を英語に翻訳したものだと思いますが、さすがに
強烈です。
ここに口調や身振り手振りを加えて、当時のドイツ国民を熱狂させたのでしょう。
マッカーサー氏はこれらのスピーチを選ぶにあたって、毛沢東やゴルバチョフなどを省いています。
もちろん、言語の影響はありますが、
「共産主義の巨星たちのスピーチは、全く雄弁とは言えない」
つまり、教条主義的で説得力に欠けるようです。
日本人は誰もノミネートされていません。
第二次世界大戦に深くかかわった国なのに不思議ですね。
個人的な偏見ですが、西洋人はギリシャローマ時代以来、雄弁術に深い関心を持ち、
自分の主張を聴衆に訴えるために、言葉の選択やリズムに腐心してスピーチするのに対し、
東洋人は、形式的な概念を伝え、できるだけ揚げ足を取られないように話すからでしょうか。
前述したように、20世紀は戦争の世紀でした。
21世紀は、これだけ情報通信が進歩して、いろいろな情報が共有化されたのだから、
20世紀のような狭い空間での熱狂は起こらない(つまり戦争は起こらない)
と思っていたら、ロシア・ウクライナ間で、大きな戦いが起こってしまいました。
ロシア国民はロシア政府の発表を信じ、それ以外の国ではウクライナ政府の対外発表を
信じているようです。(インド・中国は不明ですが)
ロシア側は、ジャーナリストや赤十字も無差別に攻撃している(という印象)ですので、
果たして現地で、実際に何がどの程度起こっているのかは、判断が難しくなっています。
ここで、20世紀スピーチ集に戻ると、ヒットラーに宥和策で対応していた英国の
チェンバレン首相は、ヒトラーがそれまでの約束を次々に反故にして、
スデーテン地方に進駐したことで判断を180度転換し、
ドイツがポーランドに攻め込んだ時に宣戦布告しました。
その後、チェンバレンは、過去のドイツの侵略に対しての優柔不断さを追求されて首相の座を追われ、ウィンストン・チャーチルが英国首相として登場します。
当時のチェンバレン首相の立場に立つのは、欧州の指導者でしょうか?
それとも、現在では米国のバイデン大統領でしょうか?
分断国家になってしまった米国の、しかも高齢(イコール保守的?)のバイデン大統領が、
どのような決断を下すのかによって、世界は大きく影響を受けそうですね。