FP相談を受けるときに、第一に相談者さんと話すのはライフプランです。
「あなたはどんな人生を送りたいですか?」
ということがお金の話を始める基本条件なのです。
明治時代から第二次世界大戦前までは、一般的な男の子の目標は「末は博士か大臣か」と
言われていました。
幕末の漢詩にはこういうのもあります。
「男児(ダンジ)志(こころざし)を立(た)てて郷関(キョウカン)を出(い)づ」
意味は下記です。
男児たるもの、志を立てて、故郷を出たからには、
学問が、成就すること無ければ、二度とは帰らず。
つまり、ひたすら上を目指して頑張るというスタンスです。
上位のステータスを目指して努力してうまくいけば出世・お金・名誉などが付いてくる
ということだったのです。
第二次大戦の敗戦後もしばらくは「エコノミック・アニマル」と呼ばれながら、日本の
経済成長と並行して、企業や官庁で出世を目指して必死で頑張ることが美徳とされました。
善し悪しは別にして、かつてはしっかりとしたライフプランの軸があったのです。
ところが現在はどうでしょう?
一生懸命勉強して博士号をとっても、「ポスドク問題」と言われるように就職が不安定です。
職があっても、有期研究員ならば契約後の保証はありません。
政治家になって与党の大きな派閥に入っても大臣になるのは極めてラッキーかつ(ふつうは)高齢になってからです。
それに選挙で負ければただの人です。
どの方向へ行っても、これは素晴らしいという軸は見当たりません。
学校というものは、本来は社会に出る前に必要な知識を習得しながら、社会に出てからの
自分の人生の軸について考える時間を持つものだと思います。
自分の人生の軸を考えている人もたくさんいると思いますが、残念ながらじっくりと考えていない人もたくさんいるようです。
五里霧中で社会人生活を送ってきて、定年直前でハタと気が付いて、自分の老後は大丈夫だろうか?これから何をやりたいかを考えるのでは少し遅いでしょう。
私が会員になっている「みんなのお金のアドバイザー協会」の岡本理事長は、
人は「しあわせ持ち」を目指すべきで、そのためのメルクマールとして
「6つの冨」を上げています。
6つの冨とは①金融資産(フィナンシャルアセット)②健康(フィットネス)③家族
(ファミリー)④交友関係(フレンド)⑤楽しみ(ファン)⑥社会貢献(フィランソロピー)
のことです。
「6つのフ」をバランスよく持つことで「フ」が「冨」になるということですね。笑
学校教育では、仕事も家族も友人も人生全体を構成する、大切だが一つの部分であることを教えて、その中で人生の軸を考えることから始めたらよいと思います。
そして人生全体を支えるのがお金の流れです。
お金は大切ですが、まず人生の軸があって、人生計画(ライフプラン)を支えるためにお金が存在するのです。
学校での金融教育とは、社会に出てからの自分の人生の計画(または夢)を考えて、
その計画や夢を実現するために必要な金融知識を得ることと、実際にいくらくらいのお金が
必要なのかをシミュレーションすることだと思います。
卒業して会社員になって生涯年収と生活コストを計算して不足するならば、そこで初めて
「投資」ということが出てくるのであって、決して初めから「投資ありき」ではありません。
お金というものは自分の人生計画を実現するための有効かつ不可欠な手段です。
お金は人生には絶対に必要ですが、あくまで手段にすぎません。
主役は人生計画つまりライフプランだということを忘れないようにしたいものです。