私は日本FP協会の会員なので、毎月自宅に会員誌であるFPジャーナルが送られてきます。
2021年11月号の特集は「みんなのシニア相談」です。
これを読んで、「あれっ?」と思ったことがあります。
相談事例は50歳代の現役世代と70代後半の介護予備軍の事例だけなのです。
老後生活のスタートで、最も大切な65歳から75歳の相談事例が載っていないことに
とても違和感がありました。
つまり60歳で定年退職し65歳で仕事から離れた後に、70歳代後半になるまでの間
の自分自身の生活の相談事例が無いのです。
個人的に体験してみてわかるのですが、65歳から75歳までの10年間は人生の最後の黄金期とも呼べる期間です。
人生の終活を迎える前に、この黄金期にワクワクする時間を持つことができれば、
75歳からの人生もとても有意義に過ごすことができると思います。
ところで、たまたまこの雑誌には載っていなかっただけかもしれませんが、手元の各種書籍やネット記事などを読んでも、この年代の話は殆ど見当たりません。
人間は65歳からいきなり75歳になるわけではありません。
また65歳から75歳までの間に、何も問題が生じないわけではありません。
この年代の相談事例が上がってこないのは、おそらく事例を書く人が60歳以下で
自分の年齢以下の人のことと、自分の親年代のことはよくわかるが、その間は経験していないのでわからないからでしょう。
人間以外の生物にとって、生きていくことの大きな目的は生殖です。
地球上の大小さまざまな動物も。子孫を残して種を反映させるために必死に
努力しています。
そして繁殖能力が衰えたら個体の死を迎えます。
人間も動物の一種ですから、生殖能力が盛んなうちは、体力もあるうえに免疫などで
身体が守られています。
若いうちは怪我や病気をしても回復が早いですね。
ところが生殖能力の衰えとともに、人間を守ってくれる力も同時に衰えてきます。
男女および個人差があって一律には言えませんが、大まかに言ってこれが60歳前後
つまり還暦です。
個人的な話ですが、私も60歳前半までは病気知らずな身体で元気でしたが、65歳を迎えるころになって、入院や手術を何回か行いました。
それも不摂生をしたということよりも、生まれつきの内臓機能の問題やある種の
ホルモンバランスが崩れたことで病気が顕在化し、治療のために手術に至ったのです。
医学的ではなく、経験的な話になりますが、60歳から65歳を過ぎて、仕事という
緊張から解放される時期と、身体の生殖機能が衰えて免疫が弱くなり、身体の不調が
現れてくる時期が一致しているのです。
このままでは老後の人生が暗いものになると思った私は、65歳の時に3大チャレンジを決意して実行しました。
一つ目は、Kobo Trail 走破。奈良県の吉野山から和歌山県の高野山までの56キロ
(累積標高3700メートル)のトレイルランニング大会です。
二つ目は、スイスのアイガー・ウルトラトレイル大会で51キロを完走。
標高1,000メートルから2800メートルまでを登って駆け下るトレイル大会です。
三つ目は、兵庫県の村岡ダブルフル・ウルトラマラソン大会で66キロを完走。
獲得標高2,500メートルの山岳マラソン大会です。
結果は、一つ目は途中の関門に引っ掛かりましたが、あとの二つは目標を達成することができました。
これをやったことで、達成感と65歳以降の人生を乗り越えていく自信が生まれたことを
覚えています。
したがって65歳から75歳(人によっては80歳や90歳ですが)までの時期を
どのように乗り越えるかが人生の最後の勝負に勝つ布石になるのです。
ある調査によれば、老後のためにせっせと貯めたお金のうち、死ぬまでに全部を使いきれる人は極めて稀だそうです。
自分たちの老後生活のために貯蓄したお金は、きれいさっぱりと死ぬまでに使い切ってしまうのが理想ですが、
現実には残された配偶者の生活費などを考えると残金ゼロというわけにはいきません。
しかし、死ぬ間際にお金がいっぱいあってもあの世には持っていけないわけですから、
できれば身体が元気で有効に使えるうちにお金を使うべきです。
時間が自由で、やりたいことがやれる期間は限られています。
それが65歳から75歳です。
私のような長距離のランニングでなくても、例えばアフリカのサファリ旅行やヒマラヤ登山など、今までやったことが無い冒険を企画してはいかがでしょうか?
やや無謀な企画にはお金を使わねばなりません。
私もスイスの大会参加にはかなりのお金を使いました。
思い切ってお金を使うためには慎重なお金の計画が必要です。
そして計画を立てるためには、75歳以降に必要なお金をもう一度計算しなおして
おそらく使わないであろう金額を冒険に充てるのです。
65歳で仕事を離れるならば、その時点で自分のライフプランをもう一度見直して
将来のお金の流れを再計算して、自分がワクワクするやりたいことをやりましょう。
人生の終活を迎える前に、ワクワクする時間を持つことが、75歳以降を有意義に
過ごすためには必要だと思います。
繰り返しになりますが、65歳から75歳は人生の最後の黄金期です。
この時期をどのように過ごすかで、人生の価値が決まると言っても
言い過ぎではないと思います。