1982年に初めてスペインに赴任した時は、日本の円は強い(スペインは物価が安い)と感じました。
1990年にアメリカに赴任した時も、スペイン時代ほどではないものの、日本円の強さを感じました。
2000年代に仕事でアジアを飛び回っていた時も、物価が高いと感じたことはありません。
ところが、2010年代から旅行に行くたびに、アジアでも徐々に海外の物価が高いと感じ始めました。
為替レートは、昔に比べてそんなに動いた感じはないのですが、海外では昔に比べて同じ1万円で買えるものが減ったと実感した記憶があります。
ダイヤモンドオンライン掲載の野口悠紀雄さんの下記記事(一部抜粋)によれば、2010年に比べて、10年間で日本円の購買力は3割低下しているそうです。
1995年と比べれば、25年間で半分になっています。
これは1970年代と同じ水準の購買力だそうです。
いつのまにか我々は弱者になったようです。
「実質為替レート指数」というのは、現実の為替レート(上の例では、第2年目に1円=110分の1ドル)と、購買力平価(1円=100分の1ドル)の比率を100倍した値(上の例では91)をいう。
これは、ある国の国際的な購買力がどのように変化したかを、基準年次を100として示すものだ。
冒頭で述べたのは、2010年を100とする実質実効為替レート指数だ(「実効レート」は、対ドルだけでなく、さまざまな通貨との関係を総合的に示す指数)。
この値が、現在では70程度になっている。つまり、日本人の国際的な購買力は10年に比べて3割程度低下したわけだ。
この値は、1995年には150程度だった。だから、いまの日本人は、その頃の半分以下の価値のものしか外国で買えない。そして、これは70年頃と同じ状態ということだ。
円安の「麻薬」に頼り続け、日本円の購買力は70年代に逆戻り | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
野口さんは、これは政府の度重なる円安政策の結果、企業の利益回復と株価の上昇が生じたものの、円訳で得た利益を企業が溜め込み、労働者に分配しなかったことで労働生産性が向上しなかったことに主因があると主張しています。
もしも円安政策と企業の利益溜め込みによって、日本の労働者の賃金が国際的に低く抑えられてきたのであれば、労働者としては正当な賃金の引き上げを要求してもよさそうですね。
私の学生のころは労働組合が強くて、国鉄(今のJR)が頻繁に「遵法闘争ストライキ」をやって、電車を止めていました。
就職してからも、メーデーは盛んで、組合は熱心に賃金引き上げ交渉をやっていましたが、
バブルが崩壊し、雇用の確保が切実になってからは組合の勢いも衰えたように感じます。
バブル崩壊と「失われた20年」から既に日本経済が回復しているにも関わらず、野口さんが主張するように十分な賃金引上げが行われていないのであれば、給与所得者は消費を抑えるので、国内市場は委縮して消費全体も伸びなくなって、最終的に国内市場に依存する企業自体が苦境に立つはずです。
今、我々を苦しめているコロナウイルスでさえも、あまり毒性が強いと人間を殺してしまって元も子もないので、毒性を弱める方向に変異すると言われているのですが、(正しいかは知らんけど 笑)もしもそれが正しいならば、我々も多少はコロナウイルスを見習ったほうがよさそうです 笑
このことは議論しだすと百家争鳴でしょうが、個別企業ではなくて企業全体として利益を独占して労働者に十分還元していないのなら、政府が円安政策をとる場合には、企業利益の労働者への再分配を行わせることも並行して考えてもらいたいものですね。