• 定年男子のランとマネー

100歳までの老後資金が1億円必要と仮定して(300万円X35年)、普通の人はそのお金どうやって手当てするのでしょうか?

夫婦の年金合計が月22万円と仮定すると(22万円X12X35年)約9000万円になり、9割方は公的年金で賄えます。

(夫婦ともに無病で100歳まで生きる前提は非現実的ですが)

残りの1000万円弱は退職金や貯蓄で賄うのですが、もしも40歳くらいで早期に退職した場合(つまりFIRE)ならどうなるでしょう?

FIREするときに100歳までの金融資産を持つとなると、生活費プラス諸費用で最低約2億円が必要になります。(300万円X60年+諸費用)

このレベルの金額を40歳までに手に入れるには、何かの才能に恵まれているか、起業して会社を設立するか、海外でIT関連や投資銀行などに勤務するかということになります。

これは普通の人には難しそうですね。

若い40歳でFIREできなくても、まだ元気がある50歳でFIREしたとしても、それでも1億5千万円は最低必要です。

もっと少ない金額でも、運用で年率3%を達成できればFIREできるということなのだと思いますが、FIREした後にどうするかによって、冒頭で述べた公的年金や退職金などの老後資金は大幅に減少する可能性があります。

FIREを考える人は、手元に資産があるから公的年金は少なくても大丈夫という考えになるのでしょうが、いざ老後を迎えてみると手元資金を取り崩すことは心細く感じます。

その点、公的年金などで定期的にある程度の収入があるのはとても心強いものです。

公的年金は、信用リスクという意味では国から給料をもらっているようなものですから、金額に変動があっても倒産してもらえなくなる確率はかなり低いです。

一方で、資産を増やしてFIREできたとして、その資産はどこに置いてあるのでしょうか?

FIREすることが資産を運用しながら資産の数%を毎年取り崩すのであれば、資産は証券会社におくことになります。

証券会社の顧客預かり資産は、証券会社の自己勘定とは別に管理されています。

証券会社に勤務したことがないので実際のシステムがどうなっているかはわからないのですが、

銀行の内部管理体制から想像すると、顧客預かり資産を本当に自己勘定に流用していないかは内部の限られた人間にしかわかりません。

というか、銀行も証券会社もいくら立派な内部管理システムを作っても、最後は管理する人間の問題です。

証券会社の経営が傾くほどに、資金の流用が行われやすくなり、隠蔽は巧妙化します。

もしも証券会社が破綻して、顧客預かり資産を変換できない場合には

「それでもなお、顧客資産の円滑な返還が困難となった場合は、日本投資者保護基金から

1顧客当たり1,000万円を限度として補償されます。」

(出典 https://www.jsda.or.jp/jikan/qa/002.html 2021/08/13)

銀行が破綻した場合に、1000万円までは預金保険で保証されているのと類似のシステムです。

現代では銀行で資産運用しようという人は少ないでしょうから、1000万円以上の預金のある方は、ほかの銀行に分散するか、1000万円以上の部分は、その銀行の信用リスクをとっています。

(預金は預金者から銀行への貸付です)

証券会社の場合は、通常は口座を分散すると運用が非効率になるので、証券会社の資産管理リスクをとって運用していることになります。

さらに預金はネットを使えば比較的短時間でほかの銀行に資金移動できますが、証券は運用している対象によっては換金に時間がかかることがあり、また証券を売却すると運用機会を逸することで期待したリターンが得られないことがあります。

通常は1000万円以上の預金は銀行の信用リスクをとっていることを意識しないのと同じく、自分の資産を証券会社に預けることが証券会社の資産管理リスクをとっていることを意識する人はあまりいないでしょう。

しかし50歳でFIREしたら、証券会社との付き合いは50年間になるかもしれません。

過去50年間の金融機関の歴史を振り返れば、今後の50年で何が起こるかは予測できません。

FIREできることは素晴らしいと思いますが、資産が増えることで思ってもいないリスクをとることや、FIRE後に働かないのであれば、老後の支えである公的年金の金額が有意に減少する可能性なども併せて考えたほうが良いでしょう。


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