面白い本を読んだのでご紹介します。
小幡績著「アフターバブル」です。
「鬼滅の刃」的な面白さではなくて、全くの経済のお話です。(笑)
著者は「バブル経済」に焦点を当てて論じています。
著者の言いたいことを極めて簡単に言えば、下記のようになります。
1492年の新大陸発見と、同時期の宗教改革によって「フロンティア」「流動化」「外部」というバブルの3大要件を満たした西欧世界は、それまでの循環的経済成長をしていた中世から、長期的バブル経済に踏み込むことになった。
(1492年以前の長期バブルはローマ帝国時代にまでさかのぼり、中世がキリスト教の力も加えて安定的に経済活動を継続した)
近代では、1989年のベルリンの壁崩壊を契機に東欧世界というフロンティアの出現で中期バブルが始まり、リーマンショックでバブルが終わるはずだったのが、日本銀行が始めた量的緩和政策で延命して今日に至っている。
短期バブルは、リーマンショック後から始まり、崩壊寸前でコロナショックが襲ったことで結果的に延命されることになった。
このあと、おそらくコロナバブルが始まるが、世界にはもう「フロンティア」も「外部」も「流動化」の余地も残されていないので、短期バブルであるコロナバブルも中期バブルも、もうすぐ終焉を迎える。
もしかしたら、長期バブル、つまり近代資本主義も終わってしまうかもしれない。
どうでしょうか?
なかなか面白い見方でしょう?
もちろん、反対意見や否定的意見は山のようにあるでしょうね。
通常の経済書にあるような、統計や図表はほとんど出てこなくて、行動経済学(たぶん)に基づく心理的なお話が大部分です。
でも個人的には、人生のリスクを考えるうえで、全く無視してしまうわけにはいかない意見ですね。
何故かというと、会社員の時に営業をやっていて、バブル経済が崩壊してから一生懸命お客様の「買う気」を起こさせようとしても、一向に反応が無い状態が続いているからです。
「お前の能力が低いのだろう!」
営業で成果を上げている人も多いと思うので、事実でしょう。(苦笑)
でも日本銀行が一生懸命お金を供給し、日本政府が一生懸命お金を使わせようと施策を考えても、あまり消費は拡大していません。
日本で最も優秀な人たちが、頭脳を絞って消費者にお金を使わせようとしても上手くいかない・・いったいなぜでしょうか?
僕の答えは、「人々の心がお金に感応しなくなっているから」
例えば、特別定額給付金10万円をもらっても、消費などに使わずに貯金か投資に当てはめる人が多いそうです。
もともと欲しいものがないので、旅行や飲食にお金を使っていたものが、自粛生活になって旅行や飲食が制限されるとお金は使い道がなくなってしまったのでしょう。
もちろん、社会格差は広がっていますので、生活資金が必要な方は増えていると思います。お金が必要な方々にとり給付金や補助金は大変助かったと思います。
でも給付金が投入された結果、株式市場や不動産市場が上昇することは、もともと日本政府が考えた、あるいは期待した給付金の効果とは違いますよね。
やはり、はじめの案通りに、困った人だけに30万円を給付するほうが、効果は大きくて全体のコストは少なかった気がします。
コロナ対策で財政の大番振る舞いをしたにもかかわらず、お金が株式市場や不動産市場に向かうならば、またバブルです。
でも次のバブルが弾けた後に、もしも経済不況や金融危機が起こった時に、政府の財布にはいくら残っているでしょうか?
ゼロではないか?
というのが小幡さんのご意見です。
小幡さんの著書を読んでいると、昔に習った「モノの値段は需要と供給で決まる」という経済学の基礎を思い出します。
小幡流に言えば、本当の需要が無いのにモノの値段を決めるならば、それはバブルに踊らされて、「たまたま」決まるのだ・・ということになります。
つまり人が想った値段、例えば、現在は表参道のマンションの1部屋は100平方メートルならこのくらいが相場という値段は、実は需要に基づいた値段ではないならば、バブルが弾けて金融危機になり住宅を買うための融資が止まると、買い手がいなくなって値段がつかなくなり、瞬間的にせよ値段はゼロになるかもしれません。(笑)
また投資の本にも「ある会社の株式の本質的価値を見抜いて、それより低い時に投資せよ」とよく書いてありますが、小幡さんの説に従うと、モノの価格がたまたま決まるならば、株式の本質的な価値を見抜くには相当の才能が必要になりそうです。(苦笑)
この本に書いてある未来予測通りに事態が進行するか否かはまったく分かりませんが、コロナ騒ぎが沈静化したらバブルが起こるのは間違いがなさそうです。
そのバブルが弾けた後に、日本政府(日本銀行)に対応できる施策や資金が残っているかは個人的にはかなり疑問です。
資産防衛(というほど自分には資産がありませんが)を含めて、定年後のライフプランは、慎重にかつ常に見直しておいたほうがよさそうです。