最近ネットニュースや週刊誌の見出しを眺めていると「預金封鎖」や「財政破綻」などの文字が目に付くような気がします。
これはおそらく新型コロナ禍を契機として起こった給付金や助成金などの手当ての資金が国債の増発によって賄われる様子なので、財政赤字の増大を危惧した方々や危機を煽ろうとする人たちが声を大きく叫んでいるのでしょう。
経済学者の中にはMMT理論なるものを主張して、国債を増発しても財政破綻にはならないとの議論をされる方もおられるようです。
MMT理論にご興味のある方は、東洋経済オンラインのデービッド・アトキンソンさんの反論記事をご覧ください。
https://toyokeizai.net/articles/-/361227
財政や経済の分析は専門の方にお願いするとして、国債の発行が国家予算に占める割合を知るために、国の一般会計予算の内訳を、会社の決算書や家計の観点から眺めてみることにしました。
(2020/07/10/閲覧)
まず歳出です。
総額は128兆3493億円です。
このうち国債費は23兆4774億円(18.3%)です。
支出の約2割が借金の返済に使われています。
高齢化社会を反映して、社会保障費は36兆7343億円(28.6%)です。
この2つの項目で総支出の約半分を占めています。
国債を増発すると、国債費が増えて、予算規模を増大しない限り、社会保障費を始めとするほかの項目が削られます。(現政府は予算規模を増大することで対応していますが・・・)
次に歳入ですが、国債発行による公債金収入は58兆2476億円(45.4%)です
歳入の半分弱が借り入れによるものです。
租税収入は63兆5130億円(49.5%)になります。
これを家計で考えると、年収500万円(手取り)の家計では91万5千円が借金の返済と利払いに使われています。
また500万円の収入のうち、毎年227万円を借金で賄っています。
イメージで言えば、消費者金融に頼って家計を回している家庭でしょうか?
会社の決算書で考えても、キャッシュフローの2割が利払いと借り入れ返済に消えてしまい、会社を生かしておくために売り上げにほとんど匹敵する借金を続けている会社という感じですね。
家計でも会社でも、普通はそんなに貸してくれませんが、国家だから(国家には徴税権があるから借り入れができるという人がいます)借りることができるのでしょう。
この状態を改善するためには、税金を沢山取るか、必要経費を絞り込むくらいしか思いつきませんね。
でも日本人は税金を払うのが大嫌いのようで、消費税の上昇スピードはゆっくりですね。
税金を増やさずに国債の発行を継続していると、予算の中の借り入れ関連費用が大きくなって、徐々に必要経費が圧迫されてきます。
国債費がほかの項目(社会保険や地方交付金など)を侵食してしまうのです。
これを放置しておくと、国民が日常生活で必要な行政サービスを政府に要求しても「無い袖は振れません」という回答が返ってくる可能性があります。
ブラックユーモアのようですが、歴史を振り返ると、全くありえない話とも言えません。
借金については昔の日本政府も苦しんだらしくて、借金が過剰になって、にっちもさっちもいかなくなった時に、弱い政府は「徳政令」といって、政府(幕府)が借金を帳消しにする命令を出したことがありました。
鎌倉幕府が御家人保護のために出し始めたようですが、次の室町幕府も徳政令を出していました。
借金しても払ってくれないかもしれないというわけですから、両幕府共にだんだんと勢力を弱めて、最終的に無政府状態である戦国時代に突入しました。
海外でも財政再建に失敗して借金を払えなかった国は複数存在します。
最近で記憶にあるのはアルゼンチンのデフォールトでしょうか?
デフォールトに至る前には、通貨が弱くなって高いインフレ率に苦しむことが多いので、生活はかなり厳しくなりますね。
日本国がデフォールトに至るには、まだ時間的余裕があると信じますが、このまま野放図に国債の増発を続けていると、本当に「無い袖は振れな」くなることも考えられます。
そうなると、自分で何とかできる高所得者や富裕層よりも、自助手段が少ない低所得者ほど生活が厳しくなる懸念があります。
国債の増発は、地球温暖化と似ていて、国民一人一人には、直接関係がないように思えますが、放置しておくと、気が付けば暑さや不快さだけではなく、集中豪雨や自然災害の増加など大きな「損」となって国民生活に跳ね返ってくると思います。