5月28日、日本CFA協会の「生活者の経済的自立と金融専門家の役割」オンラインセミナーを視聴しました。
このセミナーは、FIWA(みんなのお金のアドバイザー協会)の代表理事の方々中心になって、日本CFA協会の協力を得て開催されたものです。
セミナーの内容は後日公開されるようなので、印象に残った点だけに絞って書いてみます。
僕が最も印象に残ったのは、最初の登壇者である塚崎公義氏(久留米大学商学部教授)の
言葉です。
「仕事も大切だけれど、それと同じか、それ以上に老後も大切」
「このセミナーは投資の話が中心だけれど、本当のアドバイザーはその前の段階からアドバイスをしたほうがよいのではないか」
記憶ベースですので、正確性には欠けるかもしれませんが、塚崎さんが優しい口調で語られる中に、大きな真実があるような気がしました。
老後の3大課題は、健康、お金、孤独だと言います。
これは大体のコンセンサスがとれているようですが、実は若い時からの課題でもあるのです。
例えば20代は、お金(仕事)>>>孤独>健康
30代は、お金(仕事)>>孤独>健康
40代になると、お金(仕事)>>健康>孤独
50代では、お金(仕事)>健康>孤独
60代で定年を迎えると、お金(貯蓄、年金)>>>>>健康=孤独
70代以降は、推測ですが、孤独>=健康>>お金(貯蓄、年金)
上記には異論のある方も多いかと思いますが、これまで僕の周囲の人を見てきた感じでは、
おそらく60代になって、これからのことを考えたときに、手元の資金と将来の年金収入を計算して愕然とするのではないでしょうか?
この時期が、最もお金の不安が大きくなる時でしょう。
70代以降にお金の悩みが後退するのは、お金持ちになったわけではなくて、自力ではどうしようもない(収入増加が見込めないから、あるだけで生きるしかない)という諦めの意味です。(笑)
皆さんもこんな風に人生を振り返ってみて、先行きを考えてはいかがでしょうか?
でも実際に定年生活を送るようになると、暮らそうと思えば公的年金だけで暮らせます。
ただし条件として、住宅ローンを完済していることと、配偶者以外の扶養家族がいないことが挙げられますね。
現在の高齢者世代は、学校を卒業して独立して仕事をしていた子供たち(現在の中高年世代)とは、子供たちが定年に近くなって、再び距離が近くなるケースが多いような気がします。
高齢者世代は、一般的に年金や退職金でも比較的恵まれている印象なので、介護は主に親の資産を使って、ヘルパーさんや施設を活用することが考えられます。
でも、そのような高齢者世代を見ていると、子供たちが時折訪れる以外には、友達が来るでもなく、施設の介護職員さんや通いのヘルパーさんとの会話がすべてだという人がほとんどのような気がします。(夫婦が揃っていても会話があるとは限りませんからね 笑)
没頭する趣味がある人は好いのでしょうけれど、特に何もない人は、例えば何もない夜をどういう気持ちで過ごすのかなあと思います。眠れない夜は辛いですよね。
これに比べて中高年世代はどうなるでしょう?
子供さんがいても、30代後半の結婚ならば定年近くまで自分たちの生活で手一杯でしょう。
自分たちの資産と言っても、バブル崩壊以降の日本と日本人は、じりじりと貧乏国、貧乏国民への道を辿っていますので、老後のために十分な資産を蓄えている人は少ないかもしれません。(新型コロナ禍でさらに貧乏になりそうな気もします 涙)
お金・健康・孤独について年代別に考えてみると、まだ余裕があった高齢者世代と異なって、現在の中高年世代は60代を境にして、多分老後資金への不安が急激に大きくなりそうです。。
老後資金の心配が急増したと言っても、簡単にお金が増える手段があるわけでもありません。
例えお金の心配を開き直って鎮めることができても、60代後半になり仕事を離れると、
自分の体が日に日にいうことを聞かなくなる実感と、会いに行く人や会いに来てくれる人が少なくなっていく寂しさ、つまり感情の起伏が徐々に大きくなっていくのです。
塚崎さんの言われることが、こういうことも踏まえて老後のことを考えておきなさいということであれば、とても大切なアドバイスだと思いますね。
そして「本当のアドバイザーはその前の段階のことからアドバイスしたほうが良い」というのは、まさに60代以降の(若い時よりも)感情的に不安定になりがちになる老後のことを踏まえたうえで、人生全体をアドバイスするのが本当のアドバイザーではないか?という意味のような気がします。(勝手な推測かもしれませんが)
このような考えで顧客に接することが、FIWAのアドバイザーの一つの在り方になるのであれば、塚崎さんの言われるような本当の(理想の)アドバイザー像を目標にするのも善い哉と思いますね。