• 定年男子のランとマネー

アッセットロケーション(資産の置き場所)ということを考えるときに、外してはならないのが個人向け国債(変動10年)と普通預金です。

個人向け国債については、いつでも換金できるという流動性を多少犠牲にする代わりに、信用リスクの最も低い(はずの 笑)国家の保証と、不完全ながら金利にインフィレヘッジ機能がついています。

普通預金は、あまりに普段の生活に密着しているので、資産運用といわれてもピンとこないかもわかりませんが、利便性・流動性・1000万円までの安全性において重要な位置を占めています。

今後、新型コロナ禍が収束に向かった後には、経済の不振や金融危機が来るのではないかと言われています。

実際にどのような事態が発生するかは神のみぞ知るですが、現在の金融業界を見ると、人口や資産総額などの、いわば需要が減っているのに比べて、供給側である銀行の数が多すぎるように感じます。

そこで金融機関全体を考えるうえで、普通預金に的を絞って、そのリスクを考えてみることにしました。

<普通預金の3つの側面>

銀行員以外の人にとって、預金は銀行を信用して自分のお金を安全に保管してもらって、いくばくかの利子を受け取るものです。

しかし銀行にとっては、預金は負債です。

つまり預金する人は銀行に預金することでお金を貸して利子を取っているわけです。

銀行はお客様から預かったお金を、さらに利益が上乗せできる貸付や投資を行うことで預金者に支払う利子を稼ぎ出しているのです。

しかし今の銀行は健全な貸出先を探すのに苦労し、国債をはじめとした安全な投資先の金利が低下しているので、お客様から預金という形で借り入れてまで資産の運用をするニーズがあまりありません。

もっと言えば、やりたくてもできないのが現実です。

しかしながらお客様からの預金は断れないので、必然的に預金金利は超低金利になります。

銀行としては出来ればマイナス金利にしたいところですが、できないので仕方なく限りなくゼロに近い金利を支払っているのです。

(預金残高によって手数料を取る銀行も増えてきましたね)

ここまでは誰でも知っていることですが、では預金する人が、預金をするとき(または給料などの収入が振り込まれるときに)毎度毎度「自分は銀行にお金を貸しているのだ」と意識するでしょうか?

普通はそんなことは意識しません。

でも実際には預金するときは、預金者は毎回銀行の信用リスクを取っているのです。

第二の側面で普通預金を考えてみましょう。

銀行では普通預金を「流動性預金」と呼びます。

かつての高度成長期には(直接金融市場が未発達だったので)、貸付の原資を確保するために、流動性のお金を安定的な定期預金に変えることが重要でした。

(僕が勤務していた銀行では固定化と言っていました)

それはそうです。

いつ流出する(引き出される)かわからないお金は極めて不安定です。

そのような定期預金尊重の時代から、現代は定期預金不要の時代です。

銀行は高い金利を払ってまで、長期の資金を調達する必要はほとんどなくなってしまいました。

したがって、定期預金の金利は普通預金の金利に限りなく近づくことになりました(涙)

ところで金融に限らず世の中には、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという言葉があることは皆さんもよくご存じでしょう。

金利水準を比べてみると、銀行によって普通預金の金利には大きな差があります。

全体の水準が低いのでびっくりするような差異ではありませんが、倍率にするとかなりなものです。

ハイリスク・ハイリターンの原則から考えれば、普通預金にせよ、定期預金にせよ、高い金利を支払うところはハイリスクなのでしょうか?

一概にそうとは言えませんが、必要がないはずのお金に高い金利を付けるのであれば、少なくとも銀行側に何らかの事情があると考えたほうがよさそうですね。

ネット銀行などは、お客様をたくさん集めて、おそらく口座間の振り込みや引き落とし、外貨預金などで収益をあげようとしているのでしょう。

第三の側面は口座からの自動引き落としです。

電気・ガス・水道料金をはじめとして、様々な料金を自動引き落としにしている人はたくさんいますね。

還元率が高い少数のクレジットカードに引き落としを集中して、還元ポイントを貯めている方も多いと思います。

しかしいまだに銀行の普通預金口座から直接自動引き落としを行っている方も多いでしょうし、先ほどのクレジットカードにしてもカード代金の引き落としは普通預金口座になるのが通常です。

普通預金口座を開設している銀行がもしも倒産したらどうなるか?

理論的には、預金は預金保険で一人一口座当たり1,000万円まで保証されますから、普通の預金者に損失が出ることはまずありません。

でも別の銀行に預け替えたいと考えても、倒産してからでは、お金が返ってくるまでには相応の時間がかかります。

そのうえ、その口座で自動引き落としを行っている場合はどうなるでしょう?

このことは、例えば身内にご不幸があって、亡くなった方の名義で公共料金などの引き落としがされていた場合を想像すれば分かりやすいと思います。

銀行は口座名義人が亡くなったと分かった時点で口座を凍結します。

したがって(ほとんど)すべての引き落としはストップしてしまいます。

この場合は事情を説明すれば、引き落とし先は支払いを猶予してくれると思いますが、原則として相続に合意して相続人全員が実印を押印し印鑑証明を持ってくるまで口座は凍結から解除されません。

その間の引き落としは相続人の誰かが立て替えるか、頼んで待ってもらうことになります。

面倒ですね。

銀行が倒産するまでには、噂の段階から始まって金融庁の検査などを経て、救済相手がいれば合併や統合にいたります。

預金者保護の観点から、過去は救済合併のケースがほとんどでしたが、金融情勢がひっ迫してくると、業界内でも余裕がなくなってしまい、どうなるかは分かりません。

たとえうまく合併や統合ができたとしても、銀行同士の勘定システムが異なると、事務の処理が上手くいかないリスクがあり得ます。

つまり2つの銀行のそれぞれのシステムが異なる部分を、何らかの別のシステムでつないでいるので、間違いが生じやすくなるのです。

<BCとAC>

BC(Before CORONA)とAC(After CORONA)の世界がどのように変わるのかは分かりませんが、新聞等によれば一時的にせよ急激な経済の落ち込みは避けられないようです。

もしも体力が弱い銀行が、リスクが高い投資をしていた場合には、経営危機におちいることがあるかもしれません。

もちろんそのようなことが起こらないように、金融庁はじめ財務省は全力を尽くすでしょう。

金融危機が発生して銀行が倒産にまで至るのは、かなり低い確率だと思います。

しかし前述したように、日本の銀行の数が需要に比べて多すぎるのは自明でしょう。

実需よりも大きすぎる集団は、普通は縮小への道をたどります。

実際に、メガバンクを始めとして、地方銀行などにも店舗の閉鎖や人員の大幅削減の動きが広がっています。

ではどこの銀行を選べばよいか?

未来が見えない以上、絶対的な回答はありませんが、一つは用途によって銀行を使い分けることが考えられます。

株式や債券に投資する以外のお金の待機場所としては、個人的には冒頭に述べたように1年以上使わないのならば個人向け国債(変動10年)が良いと思います。

個人向け国債はゆうちょ銀行や普通の銀行でも預かってくれます。(どこでも利率は変わりません)

普通預金は、分けるならば生活資金は安全度が高い銀行に口座を開いて引き落としをするか、クレジットカード引き落としをするならば、クレカの引き落とし口座を安全度が高い銀行に開くことが考えられます。

余裕資金があって、投資をやりたくないかたは、金利が高い銀行に預金して少しでも金利収益を上げてもよいとは思いますが、その銀行がなぜ高金利を支払っているかについて納得できる理由が見つからないならば、常に金融情勢とその銀行の経営状態を気にかけていてください。

残念ながら、大したアドバイスはできないのですが、これからの金融業界は大きな変動があるように思われますので、気が付いたときにはこのような記事を挙げていきたいと考えています。


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