2月4日、大江英樹さんの新刊書「資産寿命」のセミナーに行ってきました。
セミナーの様子は、同席した方々がFBなどに投稿しておられますが、いつもながらの和気藹々とした楽しいセミナーでした。
場所は梅田のLucua1100にある蔦谷書店でしたが、今回のテーマでは司会をしてくださった書店の担当の方が、珍しく公的年金関係の質問を二つほどされていました。
みんなが関心のあるテーマなのですね。
僕は大江さんの話を聞きながら、この本で何を言いたいのかなとずっと考えていました。
話を聴き、本を読んでからの結論は、「Output is Central(生産物こそが重要)」です。
Output is Centralというのは、「年金生活者が必要としているのは、お金そのものではなく、そのお金で買えるモノやサービスである」という考え方です。
これは慶應義塾大学の権丈教授が著書で、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのニコラス・バー教授の言葉として紹介しているものです。
この言葉は分かりにくいのですが、僕なりの理解で言い換えると「インフレヘッジ」だと思います。将来のインフレに負けないように資産価値を維持していくことです。
(デフレが長く続いているので、あまり実感がわかないかもしれませんが 笑)
では大江さんの「資産寿命」延命法に従って、Output is Centralということについて考えてみましょう。
大江さんは老後の資産を3つに分けています。(命名は少し異なっています)
一つ目は人的資産。つまり「長く働いてお金を稼ぐ」⇒WL資産(Work Longer)
二つ目は私的蓄積。つまり「企業年金・退職金・貯蓄」など⇒PS資産(Private Saving)
三つめは公的年金。⇒PP資産(Public Pension)
WL資産については、通常はインフレやデフレに従って賃金水準は調整されるので、働き続けていれば(定年後の全般的な給与水準低下は別にすると)インフレヘッジになります。
PP資産については、公的年金というものへの正しい理解をすれば、(マクロ経済スライドがあるので若干下回るが)インフレヘッジは不完全ながらできています。
問題はPS資産です。これは過去の蓄積なので、放っておくとインフレヘッジはできません。
金融機関などは、このポイントを突いてきて「貯蓄より投資」「利回りの良い投資信託をどうぞ」などとセールスしてきます。
でも、PS資産の運用目的がインフレヘッジだけならば、世界株式インデックスファンドか
個人向け国債変動10年でも買っておけば、インフレヘッジの目的は達せられます。
それ以上に資産を増やそうとして、短期的に動き回ると、たいていの場合損をします。
このことについて大江さんは著書の中で「投資収益は不労所得で、楽をして儲けるものだ」と考える人を断罪しています。(笑)
「額に汗して働く」ことが本当の労働で、お金にお金を稼がすのは邪道だと考える人もいますね。
でも少し考えてみれば、額に汗して働いている内勤や営業職や工場労働者よりも、社屋の上のほうで社長室に座っていて、毎日会議と押印をしている社長やほかの役員などの経営者のほうが格段に報酬が高いのは何故でしょうか?
極端に言えば、経営者は事業の先行きを判断して投資することで報酬をもらっています。
つまり大きなリスクをとっているのです。
もう一度極端に言えば、経営者のやっていることと、資産運用で株を買う人がやることは同じことなのです。
(経営者は他人のお金で判断し、投資家は自分のお金で判断する大きな違いはありますが 笑)
資産運用するということは(株式運用のイメージですが)、経営者と同じことをやることになるので、それだけ難易度が上がります。
「経営者と同じなんて、そんなことはできないよ!」という人は、あまり判断を要求されないインデックスファンドや国債で運用してインフレヘッジをしておくほうが無難ですね。
(ちなみにカリスマ投資家さんを信じることは、経営者が信頼できる部下やパートナーに経営を委託することと同じです。やはり判断が伴います)
大江さんの言いたいことを僕なりにまとめると、地道に働いて蓄積した貯蓄と年金資産を、これからも地道に働きながら使っていくことで、健康寿命と資産寿命を並行させるということかと思います。
これを聞くと、かつて学校で習った偉人の言葉を思い出します。
「平凡を継続することが非凡につながる」(いろいろな言い方があるようですが)
でも平凡なことをずっとやることって、かなり難しいんですよね(苦笑)