12月7日、FPオフィスwill代表の前野彩さんのオフィスで開かれたセミナーに参加して交渉術のお話を聞いてきました。
セミナーは有料かつ非公開ということなので、中身についてお伝えすることはできませんが、プロの交渉術の話を聞いて、自分の銀行時代のことを思い出しました。
僕が銀行にいた頃は、バブル崩壊後の不良債権回収が大きな仕事でした。
不良債権といっても、融資をしたときは健全な会社だったのが、バブル崩壊以降に景気が急激に悪化したため財務状況が悪化して、借りたお金が返せなくなったのです。
中には悪いことをした会社もあったでしょうけれど、ほとんどのお客様は真面目に商売をしていました。
貸出当初の約束を守れ・・とか、経営者としての責任を果たせ・・とかいうのが銀行の立場でしたが、当時の状況では、特に下請け企業などでは不可抗力あるいは不運といった要素も大きくて、お話を聞いていても気の毒に感じることが多くありました。
お客様の中にも、精神を病んでしまう方や、銀行に対して極端に感情的になって、話の端緒を掴むことすら難しい方もおられました。
僕自身は、バブル崩壊の過程では米国に駐在していて、当時の日本の事情はよく知らない部分もあったのですが(米国の不良債権の回収はやっていましたけど)、周囲の人たちの中には、仕事だからやるけれど、つらくて心が痛むと思っていた人が相当いました。
銀行が初めて早期退職を募集した時に、そんな人たちがたくさん辞めていったように思います。
しかし厳しい状況でも、仕事ですから返済の交渉をせねばなりません。
自分自身が心掛けたのは、相手に向き合って、決して嘘はつかない、自分のした約束は必ず守るということでした。
そうすることで、相手との関係性を構築して、少なくともご自身の置かれた状況を冷静に受け入れていただくことに努めました。
厳しい現実を受け入れることで、苦しい時期を耐え忍び、景気上昇期に復活したお客様も何社かありました。
まさに「継続は力なり」ですね。
セミナーでお聞きした交渉術からしたら、全く甘くてお話にならないと言われそうですが、
当時考えたのは、これ以上銀行の評判を落としてはいけないということでした。
いつか景気が上昇して、またビジネスが上向きになった時に、悪い時の記憶や評判が足を引っ張ることは目に見えています。
せめて自分の持ち場に自分がいる間だけでも信用を買っておこうと考えたわけです。
いまになって、当時の仲間と時々あって話をしていると、そんな風に考えていた人がほかにもたくさんいたようです。
セミナーの内容とは無関係の思い出話になってしまいましたが、セミナー自体はとても有益でした。
米国で不良債権の回収交渉のために、相手の弱みを突こうとして、あの手この手を考えて、同僚のアメリカ人や弁護士と散々議論して、お金を一向に返そうとしない不動産デベロッパー(トランプ大統領みたいな人達)に様々な交渉をしたことを思い出しました。
セミナーの最後に、前野さんに自著をプレゼントしたところ、一緒に記念写真を撮っていただきました。
セミナーには遠方から参加された方もいて、前野ファンのすそ野の広さが窺えましたね(笑)