定年退職してからは、人間関係で嫌な思いや、考え込むことは殆どなくなりました。
理由は簡単で、
嫌なことには近づかない、
いやな人とは付き合わない
と思えるようになったからです。
利害や損得の関係が無くなると、人生の自由度はぐっと増加しますね。
作家の橘玲氏は著書「幸福の資本論」の中で、人間関係を「伽藍」型と「バザール」型に分けています。
橘氏の言う「伽藍」とは、人間関係が濃密で寺院の伽藍のように相互の関係をもって組み立てられているものです。
昔の言い方で言うと、家長を中心にして家族がいて、その周囲に親族がいる形です。
会社で言うと、社長がいて、取締役、部長、課長・・・とピラミッド型になった組織ですね。
定年退職後にこの組織は、家庭では父親のもとに家族が集い、会社のOB会では元社長や元役員を囲んで、懇親会やゴルフ会などが維持されます。
例えば;
「20年前のあの商談ではお前は大活躍したなあ」
「いや、部長こそ。商談相手の○○商事の役員に直談判して説得してくださいました」
などという話を、毎年、会合で会うたびに繰り返すという感じですね。(笑)
「バザール」とは、「市場(いちば)」のことで用事のある人が誰でも自由に出入りできる場所です。
用事というのは、買い物、冷やかし、気分転換など何でもいいのです。
例えば、
最近はフットサルなど集団でやるスポーツでも、
フットサル場に一人で行って、
人数が足りないチームに入れてもらい、
たまたま出会った仲間とゲームを楽しみ、
終わったらあっさり別れる・・ことがあるそうです。
その場合は、お互いの名前も連絡先も知らない・・・
「伽藍」型の人には想像できないでしょうね。(笑)
僕の定年後の人間関係は、「伽藍」型より「バザール」型に近いのですが、
(FBやLine で繋がっている人が多いので、ある程度はお互いを知り、連絡もできますが)
人によって大きく違うなあと感じることが何回かありました。
我々の年代(60歳代半ば)になると、長く勤めた職場を退職する人がぼつぼつ出てきます。
先日参加した会合で、
「来年の〇月までで退社」とか
「あれっ、退職の挨拶メールをお前に出しただろ?」
とかいう会話を何人かとしました。
長年のしがらみを漸く離れて自由(?)になったので、退職後の人間関係がすべて「バザール」型に代わり、会いたい人と好きな時間に会えるようになるかというと、これがそうはいかないようです。
まだ何らかの仕事を続けたい人は、さらに新しい仕事を探して、強弱はあっても利害の絡む
[伽藍」型人間関係を継続します。
完全に仕事を辞める人は、「バザール」型かというと、多くは主に家庭に立てこもります。
先日読んだコラムでは、ドイツでは子供が18歳になったら自宅から追い出して、あとはパートナーと二人の人生を楽しむ・・ということが書いてありました。
これは、良い「伽藍」型の例です。
ところが、子供が独立して出て行ったあとの日本の家庭は、一般には妻が差配していることが多いですね。
そこに、長年の仕事で疲れた(または家庭をあまり顧みなかった?)夫が、帰ってきて、すぐに気持ち良い「伽藍」型の関係が築けるかというと、
やや疑問です。
僕は、「伽藍」型を核にして、「バザール」型に広がる人間関係が理想だと思いますが、理想というのはなかなか実現しないものです。(笑)
現役の間は、いろいろなしがらみがありますが、定年退職後の生活の準備の一つに、老後の自分の人間関係が、主に家族との「伽藍」型か、それとも友人との「バザール」型が主体か・・などをイメージするのも有効かもしれませんね。