9月16日、経済評論家の馬渕治好さんの大阪セミナーに参加しました。
せっかくのセミナーなので、下記の質問を考えましたが、セミナーの内容と合わなかったのでセミナーでの質問は遠慮しました。
ところが、その後の懇親会で折よく馬渕さんの隣に座れたので、簡単に質疑応答をして頂きました。
金融理論は1980年代に発展を終えて、現在はITと結合した金融技術のスピード化と
それに伴う大衆化が進んでいる。
理論面での機関投資家と個人投資家の差は無くなった。
両社の差を分けるのは、ITへの投資額とそれに伴う情報量の差であろう。
個人投資家のブログなどを読むと、チャート派、優待株派を始め、自分たちの納得した方法で資産を築いている人たちがいるようだ。
(成功した人たちだけが表に出ているので、失敗した人たちはもっと多いと推定される)
馬渕さんは、ご自身が研究された成果を、個人投資家がどのように活用することを望まれますか?
<馬渕さん>
個別株の評価や推奨はやっていない。理由は、訪問したこともない会社の株価見通しなどについて何かいうのは、無責任だと思うから。
セミナー等で提供する情報を、各投資家の投資判断に役立ててほしいと思っている。
嘗ての景気判断は、製造業の設備投資や在庫に注目することが多かったが、現在の先進国では個人消費が経済活動の過半数を占めている。
一方で、企業の製造活動においても、情報通信の発達によって巨大な設備投資は徐々に不要になってきている。
(逆説的な話だが、半導体工場など情報通信機器を製造するためには、巨額の設備投資が必要になってきている)
また情報通信の分野でも画期的なイノベーションは停滞しているので、全く新しい分野への新規投資は停滞気味である。
個人消費の波が企業の設備投資の波よりなだらかだと仮定し、企業の設備投資の波の幅自体も小さくなっていると仮定すれば、結果として景気変動の波は小さくなるのではないだろうか?
極端に言えば、景気は加速も減速もしないで、一定速度で持続する傾向が強まっているのではないだろうか?
このことが、戦後最長などと言われながら、景気の高揚が一向に実感できない昨今の「好景気」の原因ではないかと考えますが、いままでの議論の前提も含めて
馬渕さんはどのようにお考えでしょうか?
<馬渕さん>
米国の連邦準備銀行に行ったときに「何故、景気は大きく変動しないのか?」と聞いたら「連銀の金融調節が上手くいっているからだ」と言われた。(笑)
金融だけでなく、在庫管理技術なども、過去の蓄積があって大きな進歩がみられるので、
今後は金融恐慌などが発生する懸念は少ないだろう。
日本社会はこれまで同質性が高いと言われてきたが、「相対的貧困」の議論から始まり。最近は「絶対的貧困」が問題視されてきている。
若い人の中には、将来の賃金上昇を前提としたゆとりある生活に懐疑的な人が増加中と感じる。(それゆえ老後資金2000万円問題に敏感に反応している?)
世界にはいろいろな国があって、一律には論じられないが、同質性が高い日本でこれだけの格差が生じているということは、日本以外の国では貧富の格差は相当程度拡大していると想像される。
先に述べた、「経済成長は一方向の低速前進」を前提とすれば、貧富の格差はじりじりと拡大していくだけであろう。
歴史を紐解けば、このような格差拡大によって堆積したエネルギーはどこかで爆発する。そして景気を含む経済活動の方向性を変えていく。
今後の世界経済の分析においては、設備投資指数や個人消費指数だけではなく、インビジブルな民衆の怒りのエネルギーの蓄積や爆発なども考慮に入れる必要があると思われる。
米国の「アメリカ・ファースト」や英国のEU離脱はその現れだろう。
もしかすると、中国やロシアあたりでもエネルギーの爆発があるかもしれない。
馬渕さんはどのようにお考えでしょうか?
<馬渕さん>
確かに金融理論以外の経済変動要因は大きくなってきている。民衆の感情のうねりもその一つだろう。しかし、これらの要因を分析して計測するのは極めて困難だと思う。
慌ただしい懇親会の席上で端的にお答えいただきました。
馬渕さん、ありがとうございました。