これは政治的巧者であるカルロス国王が、表の顔と裏の顔という二面性を使い分けていたためである。
本研究では彼の二面性を、個人の生立ち・思想・性格だけではなく、スペイン王家の悪しき歴史を打破するものとして捉えた。
前述のように、数百年にわたる長期の没落の間、スペインの政治は各時代の国王が宮廷貴族または軍人上がりの政治家を重用し、国政を丸投げにして、行き詰った挙句、クーデターが起こることの繰り返しであった。
最終的にカルロスの祖父は国を追われた。
父は王位継承権を保持したが国に還れなかった。
カルロスの悲願は、王家と国家を一致させること。
そしてそれを安定的に継続させることであった。
カルロスは王権を制約することと引き換えに、立憲議会制により、国政を民主的に選ばれた議会と内閣に任せて王家を安定させることを望んだのである。
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まだ続きます。