1月13日、日本FP協会奈良支部の研修及び新年互例会に参加しました。
自宅のある場所から奈良支部まで一時間以上かかることもあって、支部の新年会は初参加でした。
研修の一番目は「新社会人に対するライフプランのポイント」です。
講師は人材育成ファシリテーターの原邊隆繁さんです。
原邊さんは長く大学職員として学生と係わり、初歩のFP知識を学生に教えているそうです。
我が家は子どもも成人してかなり経つので、普段は20代の学生の実態に触れることがありません。
お話しの中で興味を惹かれたところを書き留めます。
まず大学生を中心に、大まかに言えば半数くらいが奨学金を借りているそうです。
奨学金を借りている理由は、
① 学費の値上げ(昔に比べてかなり値上がりしてます)
② 家計の収入減による仕送りの減少
③ 不景気による学生の収入減少 の3つだそうです。
③については昨今の人出不足で、今後は多少の改善はあるかもしれません。
たしかに年に一回の母校のサッカー部OB会に出席して話を聞いてみると、学費に加えて部活費用が高くて、
学生さんは結構アルバイトをしているようでした。
因みに奨学金で月10万円を4年間借りると、借入総額は利息込みでは530万円になり、
月に22千円を返済しても20年もかかるそうです。
22歳で卒業して42歳で払い終えるわけですね。
そういえば、奨学金を得て大学を卒業したある友人が、
「結婚してしばらくしたら、ヨメから何で家計からあんたの奨学金を返済すんの?と言われた」
とぼやいていたことを思い出しました。
夫婦喧嘩の後だったのかもしれません。笑
奨学金を借りて、大学を卒業しても非正規や無職など「不安定」な職に就く人や就職後3年以内に離職する人は相当数存在するようです。
中にはせっかく決まった就職先を親に反対されて断った学生もいて、不安なご時世だからこそ、強く「安定」を求める世相が感じられます。
それに今の世代は「さとり世代」と呼ばれているそうで、モノへの消費(所有)には熱心ではなく、
ファッションや食事、家具、インテリアなどへの消費(使用)にお金を使う傾向があります。
ではお金は足りているのかというと、収入が厳しいのでクレジットカードのキャッシングやリボ払いを利用する人もいます。
さきほどの奨学金と同じく、クレカのキャッシングやリボ払いは「借金」ですので、
返済が滞ると信用情報機関に「事故情報」として記録されます。
そうすると、後になっていざという時の借り入れ(住宅ローン、自動車ローンなど)の審査に承認がおりにくくなります。
FPとしては「借金」の持つ意味と影響を学生時代から教えてあげることが大切ですね。
二番目の研修は「FPとして知っておきたい相続と不動産」」です。
講師は土地家屋調査士の和田清人さんです。
お話しはこの10年ほどの相続税強化の流れから始まりました。
因みに世界的傾向(?)として相続税は縮小または廃止の動きがあります。
自分の国に富裕層に来てもらって、金融を始めいろいろな産業や消費を活性化させようという狙いです。
ところが日本ではお金持ちはシンガポールなどに逃げ出しています。
真逆の対応ですね。
政府の施策の主なものは下記です。
平成22年~ 小規模宅地の特例の適用を厳格化
平成27年~ 基礎控除引き下げ、 取得費加算の特例の見直し
平成30年~ 広大地評価の廃止
平成32年~ 生産緑地の2022年問題
この中で最も影響が大きかったのは「基礎控除の引き下げ」でした。
例えば、法定相続人が1人の場合では
平成26年までは基礎控除が6000万円(5000万円+1000万円)
平成27年からは基礎控除は3600万円(3000万円+600万円)
この改定により、課税価格1億円以下の被相続人の数と税額は
平成26年が14、846人、193億円
平成27年が70、238人、1、298億円と大幅に増加しました。。
課税財産が1億円超の被相続人数には大きな変化はありませんが、平均相続税額は
2割アップになっています。
基礎控除引き下げの分が、丸ごと課税財産に上積みされたわけです。
相続税の影響が「真面目に働いてコツコツと資産形成した普通の人」まで及ぶようになったのです。
この方々にはFPとして資産形成の段階から、適切な(合法な)相続対策を提案していくべきとの講師のお考えでした。
それはその通りだと思います。
次は「空き家」問題です。
全国で「空き家」の数は820万戸とも1000万戸ともいわれています。
そして「空き家」になった理由の半分が「相続」です。
「空き家」の問題の一つは「外部不経済」です。
「汚い」「危ない」のほかに外観が悪いと地域一帯の不動産価格が下がります。
「汚いし危ない空き家」の近所は誰も買いたくも借りたくもありませんからね。
次の問題は「所有者責任」です。
例えば壁が崩れ、屋根瓦が落ちてきて子供が怪我をすると所有者責任になり損害賠償の対象です。
対策として相続を放棄しても新しい管理者が管理するまでは相続人の責任です。
三番目は保有コストです。
固定資産税、火災保険・損害保険などの他に維持管理費が相当かかります。
では何故「空き家」になっているのでしょう?
「売却・賃貸・解体できなかった」
「どうするかの意見がまとまらない」
「特に考えたことが無い」
始めの二つは「相続」協議が不調に終わったのでしょうね。
講師がすすめたのは、親が生きている間に対策を打つこと(子供だけでなかなか決められない)が大切で、
そのために「家族信託」の活用を推奨していました。
「家族信託」については、いろいろな事例の紹介がありましたが、FPのビジネスの話になるのでここでは割愛します。
お話しを聞くと、これからは、人生の「ライフプラン」のなかに、
「キャリア」や「資産形成」と並んで「資産の後始末」という項目が重要視されてくるような気がします。
尚、両講義の内容には、NPO法人日本FP協会が一切責めを負うものでないことをお断りしておきます。
最後は懇親会でした。
FP協会奈良支部長の愉快な乾杯の音頭に始まって、2時間余り歓談の時を過ごしました。
僕も自己紹介をさせていただきましたが、和気藹々と和やかな会合で、
講師を始め何人かの方々と名刺交換や挨拶をさせていただきました。