12月20日、京都大学名誉教授の中西輝政さんの講演を聞いてきました。
2018年に日本にどのような危機がやってくるのか?という演題でしたが、
なかなかに含蓄のあるお話でした。
中西教授の著書は「本質を見抜く考え方」と「アメリカ帝国衰亡論・序説」を読みましたが、どちらも示唆に富んだ内容でしたので講演が楽しみでした。
中西教授によれば、2018年のポイントは3月頃だそうです。
ひとつの問題は「北朝鮮への武力攻撃」、もう一つは「日本の憲法改正」です。
北朝鮮問題に関する教授の見方は面白いものでした。
北朝鮮は合理的に行動している分かりやすい国だが挑発しすぎである;
ロシア・中国は分かりにくいが、歴史を見れば何となくわかる気がする;
一番わかりにくいのは、トランプのアメリカである;
教授はアメリカを評して
「オープンに見えるが隠すところは徹底的に隠す国」
「民主的だが、情報操作で対外的にごまかす能力が高い国」
とみておられます。
冷戦時にインターネット技術を隠し通したことや、湾岸戦争で突如圧倒的な軍事技術を見せて、その後25年間の軍事紛争をリードしたなどが事例です。
そのアメリカは2018年秋に中間選挙を迎えます。
共和党が僅差の過半数を維持するためには、3月頃に北朝鮮問題を何らかの形で解決するか、方向性を出すことが必要になります。
ここで鍵を握るのは中国です。
習近平は2017年10月の党大会で3時間半の演説を行って健在ぶりをアピールしました。
中西教授によれば、習近平は10年政権ではなく、2035年までの長期政権の維持を目論んでいるそうです。
この中国がアメリカにどのように対抗するかですね。
また中国はCO2排出権市場を開設しました。
トランプ大統領がパリ協定から離脱して、超大国の地位を降りようとしているところで「次代の覇者は中国」とのイメージを植え付ける狙いのようです。
さて日本では、2018年春までに憲法改正が国会で発議されないと、国民投票は難しいとの教授の見立てです。
憲法9条改正には、改正反対の護憲派と改正派がいますが、最近では改正派が二つに分かれて混迷をふかめています。
9条2項(交戦権を認めない)を正面から改正しようとする「2項派」と
9条3項(自衛隊の存在を明記)を追加しようとする「3項派」です。
憲法改正論議の行方にも目が離せません。
このような日本の状況とは別に、教授の指摘は、世界はすっかり変わってしまっているのに、日本が出遅れていることです。
例えば、中国は2030年にガソリン車を廃止しようとしているし、英仏は2040年を禁止のターゲットにしています。
脱石油の新戦略をしっかり描かないと、このままではマズイとのご意見でした。
日本が世界に付いて行っていないので、例えば経済は好調なのに、一向に景気に着火しないということが起こっているとの見立てです。
このままの「ゆでガエル」状態が、いつまで続くかは分かりませんが、2018年3月頃の情勢は注目したほうがよさそうです。