9月6日付の毎日新聞朝刊に「日生、定年65歳に延長」の記事が載っていました。
記事では年金支給開始年齢が65歳になることに合わせた対応と解説していますが、生命保険会社は、平均寿命や健康寿命を含む人口動態に最も敏感な業種なので、実際の決定理由は年金だけではないでしょう。
内部の方に実情を一度聞いてみたい気がします。
作家の楠木新さんは、「定年後」の中で、60歳から75歳までを「黄金の15年」と名付け、人生で最も自由でプレッシャーがない時期と定義されています。
「終わりよければすべてよし」と考えるならば、人生の終幕前の、この「黄金の15年」をいかに生きるかが、人生をよく生きるための最重要課題だとのお考えです。
同様に経済エコノミストの大江英樹さんも、60歳で定年退職したあとの選択肢を「継続雇用」「転職」「起業」とするならば、「起業」「転職」「継続雇用」の順番で薦めると主張されています。
お二方とも人生の「自由度」を最も高く評価してのご推薦です。
でも世の中には「自由なんかいらないよ」という人も相当数存在するように思います。
むしろ「65歳まで面倒見てくれるなら、多少給料が下がっても、慣れた会社で慣れた仕事をやるほうが良い」と「安定」を選ぶ人のほうが多そうです。
もしもそういう人が沢山いて、65歳まで正社員でいたいというのであれば、会社全体の活力は間違いなく低下すると思います。
僕の周囲では、60歳以降も引き続き同じ会社で働いている人が多いのですが、会社には真面目に通っているものの、かつてのように頑張って働いているようには見受けられません。
むしろ増大する空き時間を、登山やスポーツ観戦、旅行に書道などの趣味に当てる人が増える傾向です。
僕の経験では、このような傾向は、サラリーマンとして先行きが見えた50歳を過ぎたころに始まり、役職定年を経た55歳くらいから顕著になると考えられます。
会社の経営陣は定年延長を決定した後で、「高齢雇用者の活用を考えろ!」と人事部あたりに命令するのだと思いますが、サラリーマンがこんなに長い間働くのは初めてのことなので試行錯誤が続くような気がします。
「自由」より「安定」を選ぶ従業員に対して、会社が「やりがい」や「生きがい」のある仕事を与えられないのであれば、「時間」の価値を考えれば、双方にとってあまりメリットにならないような気がします。
日本経済の発展のためには、僕の心配は「杞憂」に終わってほしいですね。(笑)