6月7日に、ある講演会に行ってきました。
講師は京都大学名誉教授の佐伯啓思さんで、演題は
「脱成長経済へ向けて
~変わりゆく世界と日本経済」でした。
佐伯さんの主張は、一言で言ってしまえば、これまでの成長主義では幸せになれない、ということでした。
もう少し説明すれば、民主政治をやりすぎても政治は上手くいかないし、市場経済をやりすぎても経済が上手くいかなくて、社会にしわ寄せが生じているということでした。つまり個々の利潤追求が全体の幸せに繋がらなくなったというご指摘です。
佐伯さんが、この現象の原因として考えているのは
「グローバル化」です。
グローバル競争が進み、自由競争が激化して、各国に資本輸出先が無くなってしまってデフレ経済化が進んだとされています。世界経済の中で収益機会を見つけるのが難しくなったということでしょうね。
デフレ化を進む例証としては、ここ数十年の世界的な経済成長率の低下傾向を上げておられます。
1960~70年代は、日本は8~9%の経済成長、OECDは5%台の成長を記録しましたが、
70~80年代は、それぞれ4%台と4%半ば。
90年代は1%と3%。
2000年代は0%と2%。
世界的な低成長が低金利と並行して起こっていることが分かりますね。
成長率が低くて、金利も低いということは、一般的には事業などの利益率も低下していると考えるのが自然です。
投資を行う時には様々なことを考えます。
その中の一つに、どれくらいの収益を上げれば納得できるかということがあります。普通はこれを利益率で考えます。利益額を増やしたければ、元手を増やせば良いからです。
そうすると、60年代に投資すると10%では利益率が低かったと思われるのが、今や10%の利益率は望むのが難しいくらいになっていることになります。
確かにバブルの頃は株価がどんどん上がって、2倍3倍になることも珍しくなかったのに、今は年間で20%上がるのも大変です。
振れ幅が比較的小さいインデックス投信などでは、年間に5%も上がれば大喜びでしょうね。(マイナス分も含めての年間5%です)
例えば5%を投資の目標利回りとして、老後の元手資金を仮に1000万円とすれば、年間50万円の利益が上がれば万歳ものです。(税金は考慮外として)
この利益を再投資して複利で回せば数十年後には大きな資産になります。これが長期投資です。
でも老後の生活費として取り崩していけば、年間生活費を300万円とすれば250万円不足します。
政府のモデルケース(夫婦の年金合計)で貰える年金くらいですね。
投資はいつも利益が上がるとは限りません。元手の1000万円が元本割れをすることもあります。リスクを取っても月に4万円くらいの収入です。
僕が考える現実的な解は、老後は年金に加えて、月に5万円の給料がもらえる仕事を探して生活を安定させて、投資の収益は楽しみに使うか、働けなくなった老後のために複利で運用を続けるのが良いのではないかと思っています。
投資は経験が重要なので、一刻も早く少額から始めたほうが良いのですが、
老後になって投資を考えるならば、その前に老後の生活の資金繰り予測を立てて、不足分がいくらくらいありそうで、それを埋めるための現実的な手段を考えてから投資を始めるほうが良いと思います。