本当に基本的な問いですが、社会保障って何でしょう?
ものすごく大雑把に言ってしまえば、こうなるのではないかなと思います。
まず社会の中心に「家計」を置きます。
そして「家計」が所有している労働・資本・土地などを「生産要素市場」に供給します。
「生産要素市場」は、企業などの集まりですから生産物を生産して、「家計」は供給したものの見返りに所得を得ます。給料、地代などですね。
「家計」は得られた所得を使って、今度は「生産物市場」からお金などで生産物を購入します。「生産物市場」は企業などの「生産要素市場」で製造されたものの集まりです、流通市場とかマーケットとも言いますね。
このサイクルで社会のシステムは一応完結します。
でも何か足りません。そう政府です。
競争をベースとする市場原理に基づいて、それぞれの
「家計」が供給したものに応じて、多かったり少なかったりの利益を得ることを、各家庭の貢献に応じた
「一次分配」とすれば、公平性を保つために
補助や公共サービスが必要だけど所得が不十分な人に対して、税金などで吸い上げた所得を「再分配」するのが政府です。
政府が分配する分野は、大雑把に言えば
医療・教育・介護・保育などです。
これが社会保障システムです。
市場原理システムを社会のメインシステムとすれば、社会保障は社会のサブシステムです。
ところで、これまで説明は、現在の生産物を現在の市場参加者で分配する「一次分配」とそれが政府を通じて
「再分配」されることの説明です。しかし人間は現在だけでなく将来も生きます。
将来の生産物の分配のためにシステムが年金になります。
過去に年金が無かった時代は、よほどの資産家は別にして、老人と子供は現役世代が養っていました。農業が主な生産手段だったころは、定年という考え方はなじみが少なくて、働ける限り働くのが普通でした。
しかし現代は工業社会になってサラリーマン化が進み、収入も賃金が主流になりました。これに並行し高齢者は賃金労働から退出させられる制度が普通になってきたのです。
つまり高齢化して賃金収入が少なくなった時に、生活に必要な生産物を購入するために政府から分配される年金が重要になってきたのです。年金の金額が不十分だと、高齢者に大量の貧困が発生してしまいます。貧困の発生を防ぐために、現役世代から高齢者に仕送りしているのが年金と言ってもいいと思います。
ここで一つ考えねばならないことがあります。
日本の経済成長が続いているのならば、現在と将来の
「分配割合」を考える必要性は低いのかもしれません。でも将来の少子化と低成長が予想される現在では、現在と将来の分配比率をどのようにしていくかが重要なテーマになります。
年金の原資が限られている以上、現在と将来のバランスをどのようにとっていくかが
これからの大きな課題でしょう。