欧州債務危機を乗り切るにはスペインにはリーダーがいないのではないか?とマドリードを案内してくれたガイドに聞いたところ、
「問題はスペインのリーダー不在ではなくて、ヨーロッパ全部が危機なのだ。
我々は実力以上に背伸びした生活を享受していた。問題は元の生活には戻りたくないし、戻ろうともしていないことだ」と答えてくれた。
楠はスペインの不動産バブルの発生と終焉につき下記のように論じている[1]。
① 「EU第一主義」のため、スペインは1985年以降、産業構造の改革やリストラに取り組んだ。
その結果、21世紀を迎えるころには一人当たりの実質所得は約二倍になった。1995年から2007年までに800万の働き口を増加させ、就業人数を1200万人から2000万人に引き上げ、失業率を22.7%から8.3%まで低下させた。
これにより住宅をローンで購入可能な人が増加した。
② ユーロ導入のため、財政赤字幅等の収斂条件をクリアする努力は、結果的に低金利をもたらした。
住宅ローンの絶好の借り時がやってきた。
③ 女性の社会進出が一般化した。2003年の労働力率は55%。実際に就労している女性の率は46%。
配偶者の収入と合算すれば住宅購入も可能となった。
④ スペインの繁栄期(1996年から2007年)に増加した大量の移民の中には、成功者として住宅を購入するものが現れた。
⑤ フランコ時代の高度成長期(57年―77年)生まれのベビーブーム世代が親元を離れて独立を考える時期になった。
⑥ 政府が住宅ローン控除や譲渡益特別控除を導入した。
[1] 楠 前掲書 pp.197-213