上記の住宅需要を裏で支えたのは金融機関である。
① 貯蓄銀行や銀行はデベロッパーや建設業者に低金利で大量の融資を行った。
② 金融機関は大規模な不動産事業に直接参加した。
③ 特定の宅地開発業者にいくつかの金融機関が資本参加した。
④ 金融機関と宅地開発・建設業界は住宅の速やかな完売システムを作った。
1998年から2001年ごろまでは未だ健全性が残されていたが、2002年ごろからは為替リスクの消えたユーロ諸国からの投機的住宅投資の波が押し寄せる。
また不確実性の時代を迎え、「住宅」が安全資産と認識され始める。
金融機関は住宅の購入者と開発・建設業者に大量の貸し込みを行う。そして譲渡益を狙った短期の「住宅ころがし」が始まった。
金融機関について、スペインには主に伝統的な商業銀行と地域に根差す貯蓄銀行が存在する。1980年当時、商業銀行は7大銀行グループに分かれていた。これらの銀行はフランコ時代は護送船団方式で守られていたが、民主化移行期の変革と激しい競争を経て、ほぼ二大グループに収斂した。
一つはサンタンデール銀行を中心とするBSCHグループ。
もう一つはビルバオ・ビスカヤ銀行を中心とするBBVAグループである。
これらのグループは体制面での整備も進み、両グループともに中南米への投資を積極的に行っている。
これに比べて貯蓄銀行は預金量は大きいが、自己資本は薄く、長く地域限定で活動していた。ところが1989年に地域限定制度による規制が撤廃されてから貯蓄銀行は商業銀行および同じ貯蓄銀行と熾烈な融資拡大競争を行い金利の低下を招いた。