ところが翌年カルロス国王の周囲が騒がしくなる。
ところが式典から約一年後、2012年4月23日付けのDer Spiegel誌(英語版)は「国王のおかしな行動のあとのスペイン王室の危機」と題した記事を載せた[1]。
記事によれば、カルロスはサウジアラビアの富裕層のゲストとしてアフリカに贅沢な象ハンティング旅行に行った。
親密交際中のドイツ人貴族女性を同伴し、何故か夜にお尻を骨折したので、急遽マドリードに搬送された。74歳の国王はこのことが国民の知るところとなり、テレビを通じて国民に「いたずらを見つかって母親にしかられた少年のように」謝罪した。
カルロスは23F事件以降、長い間、自身の私生活に関する公的な批判を免除されてきた。
[1] SPIEGEL ONLINE INTERNATIONAL Big Dame Hunting Spanish Royalty in Crisis after King’s Antics 4/23/2012
カルロスの愛人はわかっているだけで約1500名とも言われ、ソフィア王妃に世間の同情が集まっている。
上記の手術のとき、ソフィアは手術後72時間が経過してから病室に現れ15分で去った。
王室に対する非難が更に高まったのは、今年二月に起こった、カルロスの義理の息子であるウルダンガリンによる慈善事業基金の資金着服疑惑である。
ウルダンガリンは元バスク地方のプロ・ハンドボール選手で、次女のクリスティーナ王女の夫である。この結婚はバスク・カタルニアとの懸け橋として祝福されたが、現在は王室メンバーを司法が初めて査察の対象としたことで王室の権威を大いに揺るがしている。
(注)ウルダンガリンには実刑判決、クリスティーナ王女には2016年 に無罪判決が下された。
リーマン・ショック以降の経済危機の中で、愛人と贅沢旅行にうつつを抜かすカルロスの退位が公然と語られるようになった。昨年10月に行われたマドリードの世論調査では、スペインの25歳以下の若者は、半分は失職しており、カルロスが民主化移行期に果たした役割には全く無関心という結果が出た。
(注)カルロス国王は2014年に退位
若いころの英雄が、そのまま一生涯にわたり規律ある人生を送ることの難しさをカルロス前国王は教えてくれているようだ。