• 定年男子のランとマネー

当たり前の話ですが、銀行に預金すれば元本にわずかですが利息が付利されて返金されます。

銀行は顧客から預かった(銀行の立場からすれば借りたお金です)を、さらに自分の顧客への貸出しや国債などの債券購入で資金を運用して利息と自社の人件費や運用費用を生み出します。

凄くシンプルです。

 

生命保険会社はどうでしょうか?

お客様からの保険料を運用して、配当や保険事故の支払いに備えます。

満期や中途解約時の返戻金も必要になります。

もちろん人件費や運営管理費用も必要です。

しかし銀行預金と異なるのは、顧客からの保険料に予めこれらの原資が含まれているのです。

生命保険を例にとれば、3つの利益の源があります。

一つ目は「利差益」です。

これはあらかじめ想定した予定利率によって見込まれた運用収入よりも、実際の運用収入が多い場合に発生する利益のことです。

バブルのころ予定利率が高かった保険を「お宝保険」と呼ぶ人がいますが、これは当初の利率の見込みが高すぎて保険会社が損をするケースです。

 

2番目は「費差益」です。

これは予定事業費率で見込まれた事業費よりも実際の事業費が少なかった場合の利益です。

 

3番目は「死差益」です。

これは予定死亡率によって見込まれた死亡率よりも、実際の死亡率が少なかった場合に発生する利益です。

日本人の長寿化によって死亡保険金の支払いが繰り延べされてきました。

これまで保険会社の利益の大きな部分は、この「死差益」が占めてきたとも言われています。

 

更に「付加保険料」です。

これは保険会社ごとに決めている手数料です。保険会社の人件費や運営管理費用に充てられるのですが、これも顧客からの保険料に含まれています。

 

尚、損害保険会社の場合は、「利差益」「費差益」に加えて「危険差益」が3つの利益源です。

「危険差益」とは予定損害率により見込まれた損害額よりも、実際の損害額が少なかった場合に発生する利益です。

最近は自然災害による建物の損傷や人への障害が増えているので、損害保険会社にとっては「危険差損」が発生しているケースもあるでしょうね。

 

このように保険会社は、銀行と異なりあらかじめ顧客から自社の人件費等を手数料として徴求しています。

したがってたとえ資産運用が上手くいったとしても、満期や解約時になって支払保険料の累計を大幅に超えるような金額を顧客に返戻することは難しいです。

 

これは預金が顧客から銀行への貸出で元本が保証されている契約であるのに対し、保険が「保険事故」の時に大きな金額を支払うことを約束した契約であり、両者の性格が全く異なることが了解されているためでしょう。

 

生命保険の「保険事故」は入院や死亡です。

生命保険で保険会社が最も損をするのは、保険加入直後に被保険者が死亡することです。

損害保険の「保険事故」は火事などの損害です。

損害保険で保険会社が損をするのは、たとえば個人賠償保険の契約直後に被保険者が自転車にぶつけられて死亡することです。

 

生命保険や傷害保険を契約してすぐにこのような保険事故が起こってしまって「うわー儲かった!」と喜ぶ人はいないでしょう。

 

ところで年金はどのように考えればよいでしょうか?

 

国民年金や厚生年金は「国民年金保険」と呼ばれます。

つまり保険です。

「保険事故」に当たるのは「65歳以降を生きること」です。

ここは生命保険や傷害保険のような単発の出来事と少し異なるところですね。

保険だから本来損得は関係ないはずですが、もしも支払い保険料とのバランスを考えるならば、終身給付なので「元気で長生き」するように努めることです。

 

企業年金は保険でも預金でもありません。

「給与の後払い」です。

「有期年金」なら一定期間で終了します。

「終身年金」なら会社が存続して財務状態が良ければ支給し続けてくれます。

 

年金でモトを取るには、とか損をしないとか言われますが、保険なのだから長生きという「保険事故」が起こった時に生活の一部分を支えてくれるものと考えて、生活資金で不足する部分を補う方法を考えたほうが前向きに生きられると思います。

 


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