サラリーマン卒業前の数年間を知識習得に費やしたことがあります。
老後の資産運用を考えるうえで基礎となる国際情勢の大きな変化についていこうとして、放送大学大学院の国際政治ゼミで学びました。
研究のテーマは「スペインの民主化」です。
実は仕事で1982年から87年までスペインに駐在していて、当時のスペインの様子を自分の見方で整理してみたかったのです。
当時のスペインの様子を少しご説明します。
スペインは1975年までフランコ将軍が独裁する国でした。
フランコの盟友はドイツのヒトラーとイタリアのムソリーニです。
第二次世界大戦はドイツ・イタリア・日本など枢軸国側の敗戦で終了しましたが、フランコ将軍のスペインは独裁体制を維持してしぶとく生き残りました。
1975年にフランコが死去してようやく軍事政権を脱して民主化が始まったのです。
フランコ将軍は自身が政治と軍事の権力を掌握する前にスペインを支配していた王家の子息カルロスを養子にしていました。フランコの死後カルロスは国王に即位したのですが、政治や軍事の態勢はフランコ時代のままでした。
カルロス国王は民主化の体制を整えるため、腹心を使って憲法を制定して文民統治を推進しました。紆余曲折があって1982年に社会労働党が総選挙で大勝して政権を掌握し民主化が一気に加速しました。
僕は、労働者階級を代表する社会労働党という、王族や軍隊と真逆の勢力が政権を掌握してどんどん民主化を進め、それとともに経済も成長してとうとう1987年にEC(現在のEU)に加盟するときまで住んでいました。
当時のスペインは若い人の熱気に溢れていてエネルギーが漲っていました。ところが時代に遅れた男性高齢者は職を得るにも苦労して辛そうでした。長い間キリスト教の強い影響のもとで
「大家族主義」が続き「男の世界」だったのが、離婚法が成立し女性の力が強くなったのです。
時代が大きく変化するときは、どこの国でも同じようなことが起こりますね。
このときは古いカトリックの国だったスペインが何故このように一挙に変わってしまったのかが僕にはわかりませんでしたが、心の中のどこかに疑問は残っていました。
スペインを離れて25年経ってもう一度かつての疑問を思い出して修士論文に纏めることができました。この過程でご指導いただいた教授やゼミ仲間から自分の論文に対して多くの批判や示唆を頂きました。またほかの人の研究テーマについて多くの見方や考え方を学ぶことができました。
2年間の修士課程が修了して感じたのは、国際政治で生じたことに自分なりの考えを持てるようになったことです。またいろいろな人の論説をフォローして話の信憑性や信頼度を測ることも学びました。
知識はすぐに陳腐化しますが、自分なりの考え方は努力を怠らなければ、常に変化し進化するものです。
そして自分が資産運用を考えるうえでも非常に役に立っています。